すべての企業、投資家に要請

――TCFD提言への対応が今後、世界で展開しそうですね。

シンプソン 私は、すべての企業、すべての投資家、そしてすべての政府は、2020年までにTCFD提言に精通すべきだと考えています。

■ CDPは2020年までにTCFDに関わる質問を強化する
22業種は以下の1~22、金融4業種は19~22
1石油・ガス、2石炭、3電力会社、4航空貨物、5旅客輸送、6海運、7鉄道輸送、8陸運(トラック)、9自動車など、10金属・鉱業、11化学品、12建材、13資本財(建物など)、14不動産管理と開発、15飲料、16農業、17包装食品と肉、18紙と林産物、19銀行、20保険、21アセットオーナー、22アセットマネージャー(出所:CDP ポール・シンプソンCEOの資料)
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 IPCCが2018年発行した「1.5℃特別報告書」は、今世紀末における世界平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃より抑える程度では世界にもたらされる被害は大きく危険で、世界の経済が被る打撃も甚大となることを示しています。気候変動の激甚化、森林など自然資源の破壊、水資源に対する悪影響など、我々を取りまく環境は緊急の対応と行動を要する事態となっています。

 また、我々の生活や社会の安全と安定を維持するには1.5℃を目指す必要があり、それには世界で野心的な取り組みが欠かせません。IPCCによれば、2020年には世界で拡大している温室効果ガスの排出をピークアウトさせ、2050年までに世界の温室効果ガスの排出を「ネットゼロ」にしなければならないといいます。

 企業が長期気候シナリオに基づく分析の成果を事業や戦略に統合すること、また資本市場においてこうした気候戦略を統合した経営の情報開示が主流となることは、世界の金融市場の安定化はもとより、持続可能な低炭素型の投資と社会への移行を加速し、気候変動の緩和につながります。資本市場では低炭素社会への移行や危険な気候変動を回避できないなら、政府が関与して規制しなければならないでしょう。

――果たして機関投資家は、1.5℃や2℃といった気温目標を真剣に捉えているでしょうか。

シンプソン 機関投資家はこれまでと比べると気候変動に関する質の高い情報を参照するようになり、気候リスクへの理解が深まっています。企業が開示する気候関連情報の活用も拡大するでしょう。

 ただ私は、大半の機関投資家のポートフォリオは、今世紀末の気温上昇を1.5℃に近づけるのに十分なものとはいえないことを懸念しています。2℃程度や2℃以上になりかねない事業への投資が続いています。

 新しい投資の在り方に移行することが必要です。温室効果ガスの排出量が多い社会から低炭素へ、そして2050年までの脱炭素を実現し、気温上昇を1.5℃に抑える必要があります。機関投資家は2050年の脱炭素に貢献する目標設定を企業に求める役割を担うべきです。機関投資家も、変わらなくてはなりません。

CDP CEO ポール・シンプソン 氏(写真:中島正之)