1兆ドルの年金基金が要請

 こうした動きを背景に、投資家もプラスチックごみ問題を経営リスクとみて企業に対応を求め始めた。

 例えば、ノルウェー政府年金基金の資産を運用するノルウェー銀行インベストマネジメントが2018年9月、「海の持続可能性−企業への期待」という文書を公表した。プラスチックのバリューチェーンに関わる企業に循環経済への移行戦略を要求するとともに、食品や飲料メーカーに使用済みプラスチック容器の処理について解決策の開示を求めている。

 ノルウェー政府年金基金の運用資産は約1兆ドル(約110兆円)。1500社を超える日本企業の株式にも約600億ドル(約7兆円)を投資する。

 プラスチックごみ問題への対応が不十分な企業は、こういった投資家から評価を下げられ、株価が下がる可能性がある。

 ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを基に企業を格付けする米MSCIは、毎年、機関投資家向けにその年に注目すべきテーマを発表している。2019年、企業の財務に影響を及ぼすテーマの1つに挙げたのがプラスチックごみ問題だ。業界別では、「清涼飲料」「総合化学」「基礎化学品」の順に影響が大きいという。

■ プラスチックごみ問題はあらゆる業界に影響を及ぼす
「プラスチックごみ」や「プラスチックごみリサイクル」といった用語が開示資料に含まれている企業の割合を業界別に調べた。対象は、米国の上場企業2450社が発行する年次報告書(2018年12月時点)
(出所:米MSCI)
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 MSCI日本法人の柴野幸恵シニア・アソシエイトは、「プラスチックごみ問題は以前から指摘されてきたが、ここへ来て、EUの規制強化や中国のプラスチックごみの輸入禁止など、企業の財務に直接影響を及ぼす動きが出てきた」と話す。

 事業や株価への直接的な影響もさることながら、悪い噂が立つ評判リスクを心配する企業は少なくないだろう。味の素環境・安全・基盤マネジメント部長の田中清理事は、「NGOがプラスチックごみをブランド別に数えて公表している。先行して対処していかないとブランド価値を毀損する恐れがある」と危機感をあらわにする。

 実際、国際NGOのグリーンピースなどが、42カ国の清掃活動で見つかったプラスチックごみを企業のブランド別に仕分けた結果を公表している。プラスチックごみが多く見つかった企業ブランドとして、コカ・コーラやペプシコ、ネスレといった名前が挙がる。

■ プラスチックごみに関する評判リスクが高まっている
世界の1300以上の団体が参加する「ブレイクフリープラスチック」が、42カ国・6大陸で回収した約18万7000個のプラスチックごみを企業のブランド別に仕分けた
(出所:ブレイクフリープラスチック)
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 ごみが多いのは販売量が多いことの裏返しでもある。こうした大手企業は、高い目標を掲げて問題の解決に取り組んでいるが、あらぬ噂が立たないよう、NGOなどの活動に目配りし、情報発信を強化してイメージの低下を防ぐことが大切だ。

 味の素は2018年秋、全社の経営リスクを議論する経営リスク委員会の下部組織として、プラスチック廃棄物の検討チームを設置した。環境や広報、調達といった部門が連携し、この問題の解決に全社的に取り組む体制を整えた。

 社外への発信も強化している。2018年11月には、西井孝明社長が、2030年にプラスチック廃棄ゼロ化を目指すと表明した。「プラスチックごみの問題は、投資家やESGの評価機関から見ても大きなポイントになってくる。取り組みを強化するとともに、どう発信していくかが大事だ」(田中理事)。