企業連合が続々

 企業の価値を左右する重要課題に浮上してきたプラスチックごみ問題だが、1社だけで解決できるものではない。世界では、企業連合が相次いで立ち上がっている。

 2019年1月に、「Alliance to End Plastic Waste(AEPW)」が米国で発足、日本から三菱ケミカルホールディングスなど化学大手3社が設立メンバーとして加わった。

 同時期に、日本では経産省の呼びかけで「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」が設立された。既に、化学や日用品・食品メーカー、小売りなど、参加企業の数は200社に迫る勢いだ(2019年4月3日時点)。

リサイクルに商機

 プラスチックごみ問題は企業にとってリスクである半面、様々なイノベーションを促し、ビジネスを広げる機会にもなる。冒頭で紹介した日用品や食品メーカーの取り組みは、顧客に新しい買い物体験を提供することで需要を開拓するものだ。

 米マッキンゼー・アンド・カンパニーは、石油化学やプラスチック業界にとって使用済みプラスチックの回収・リサイクルが新たな利益を生むとみる。回収から再資源化までの処理やリサイクル材の販売といったビジネスが拡大する。

 世界で使用済みプラスチックのリサイクル率を現在の16%から50%に引き上げることによって、2030年には年間600億ドル(約7兆円)の利益を得られると予測する。

■ プラスチックリサイクルで2030年に600億ドルのビジネスチャンス
今後、技術開発を進め、設備投資をし、使用済みプラスチックのリサイクル率を2019年現在の16%から50%まで高める。そうすることで、2030年に年間約600億ドル(約7兆円)の利益が生まれると予測する
(出所:米マッキンゼー・アンド・カンパニー)
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 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパンの山田唯人パートナーは、「石油化学業界はバリューチェーン全体で変革を起こし、新しいビジネスモデルを構築することでリスクを機会に変えられる」と話す。

 プラスチックごみの輸出入に対する規制強化も、リサイクルを後押ししそうだ。中国が2017年末にプラスチックごみの輸入を禁止したのを皮切りに、タイやマレーシアなどアジアを中心にプラスチックごみの輸入を禁止する動きが広がっている。

 有害廃棄物の輸出入を規制するバーゼル条約では、汚れたままのプラスチックごみを規制対象に加える提案が出されている。対象になれば、輸出入に相手国の同意が必要になるため、プラスチックごみによる環境汚染問題を抱える国には実質的に輸出できなくなるとみられる。

 自国でプラスチックごみを処理する必要性が高まっていることからも、リサイクルビジネスの拡大が期待される。

 世界は、「使い捨て」のモデルから脱却し、プラスチックごみを出さない「ごみゼロ」の社会へ向かい始めている。壮大な挑戦だが、未開の市場であるブルーオーシャンを見つける機会とも言える。その鍵を握るのが、「変革」である。

 容器をリユースして中身だけ売るループのビジネスは、ビジネスモデルの変革を象徴するものだ。プラスチックに代わる新しい素材を開発する素材の変革もあるだろう。ごみゼロの実現に向けてリユース・リサイクルを促進するには、使用済みプラスチックの分別、回収を徹底する必要がある。消費者の協力が不可欠で、そのためにはコミュニケーションを変革することが大切だ。

「日経ESG」(2019年6月号)では、プラスチックごみ削減に取り組む企業事例などさらに詳しく紹介しています。