6割超が対話の促進を実感

 日本企業全体でもIR活動は変化している。日本IR協議会は2019年4月、「IR活動の実態調査」を公表した。この調査で、6割超の企業が持続的成長を目的とした対話が1年前に比べて促進されたと感じており、2015年と比べると2倍以上に増えている。

 具体的にどのような事象から、対話の促進を実感しているかも尋ねている。上位には、「定期的な取材や面談でもエンゲージメントを意識した質問が増えてきた」「定期的な取材や面談でも短期的な業績見通しの質問より中長期の持続的成長に関する質問が増えてきた」「個別面談前にスチュワードシップ・コード順守宣言やエンゲージメント・アジェンダを提出してきた」といった回答が並ぶ。

■ 6割の企業が「対話促進」を実感している
日本IR協議会が実施した「IR活動の実態調査」(対象:全上場会社3755社、回答:850社)では、6割超の企業が持続的成長を目的とした対話が1年前に比べて促進されたと感じている。具体的にどのような事象から、対話の促進を実感しているかも尋ねた
(出所:日本IR協議会)
SS:スチュワードシップ
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 エンゲージメントで重要な非財務情報に関しても、企業や投資家の行動に変化が表れている。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2019年1〜2月に実施した調査によると、非財務情報について「IRミーティング」や「決算説明会」「ESG等に特化した説明会」の場で説明する企業が、前回の調査に比べて増えている。投資家の反応も変わってきた。約8割の企業が、IRミーティングやESG説明会に対する投資家の関心が高いと感じている。

■ 企業が機関投資家向けに非財務情報を説明する場
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■ 企業の説明に対する機関投資家の反応(単位:%)
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GPIFが東証1部上場企業2129社にアンケートを実施し、機関投資家との対話の実状を質問した。2019年1~2月に実施し、604社が回答した。
72%の企業がIRミーティングでESGなどの非財務情報を説明していると答えた。投資家が関心を持って聞いていると答えた企業は77.8%に上った。
ESG説明会を実施する企業も2018年から3.6ポイント増え、約80%の企業が投資家の関心を感じている
(出所:年金積立金管理運用独立行政法人)

 エンゲージメントの手法も多様になってきた。世界では、複数の機関投資家が協働で実施する集団的エンゲージメントが広がりを見せている。

 企業と投資家の双方がエンゲージメントの強化に乗り出しているが、企業価値の向上に結び付けるには工夫が必要だ。まず、従来のIR活動の延長線で、企業と投資家が対面して話すだけでは十分ではない。その場で上がった声を、経営改革やESG活動の強化、情報開示の改善などに生かしてこそ、企業価値の向上に意味のある対話となる。

 日経ESGが先進的な企業を取材した結果、エンゲージメントに臨む際のポイントが浮かび上がった。「『経営トップ』が前面に立つ」「投資家の『ニーズ』を議題に反映する」「対話で終わらず『行動』につなげる」「非財務価値を数字で『見える化』する」「示唆をくれる『良い投資家』を選ぶ」──。この5つを押さえておかなければ、望ましい成果を得るのは難しいだろう。

■ エンゲージメントで成果を出す5カ条
PBR:株価純資産倍率
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「日経ESG」(2019年8月号)では、エンゲージメントに工夫を凝らす企業や投資家の事例、さらに世界の集団的エンゲージメントの動向などさらに詳しく紹介しています。