気候危機の原因と対処法を科学的に伝えるトレーニングプログラム「Climate Reality Leadership Corps Training」を13年間にわたって世界で展開。このため今年9~10月に来日した(写真:村田和聡)

――日本の人々、特に若い世代は、気候問題の重要性を認識し、EVや再生可能エネルギーなどのスタートアップを始めようとしています。新たなイノベーションを生み出すスタートアップがたくさん誕生すれば、日本の政治的姿勢や方向性が変わるのではないでしょうか。

ゴア はい、そう願っています。日本と私の国の双方で必要とされる政策変更は、電力供給網への接続に関する規制です。太陽光発電の企業は、電力供給網への接続が困難なため、より安価な電気を販売するための機会が与えられない場合があります。一方で、政府が税金を使って化石燃料を使う企業に補助金を与えて優遇し続けるのなら、技術を駆使して未来のエネルギー源を創造する日本の新しい企業には不利です。

――2019年8月にアメリカの有力経営者で構成する「ビジネス・ラウンドテーブル」の代表を務めるJPモルガン・チェース会長兼CEOのジェイミー・ダイモン氏が、株主優先主義を脱却すると宣言しました。

ゴア 世界中の多くでビジネス界のリーダーたちは政府のリーダーたちの先を行っていると思います。政府のリーダーは時として、石炭など昔ながらの産業の影響下にあります。しかし日本でもアメリカでも、ビジネス界の人の大多数は、未来を見通し、もっと迅速に動かなければならないことを理解していると思います。

 ビジネス・ラウンドテーブルは、企業の目的を再定義することを決め、企業は株主の利益を最大化することだけに力を入れるべきではないと宣言しました。今の時代は、企業が拠点を置いているコミュニティ、従業員やその家族、環境、そして社会全体の利益に配慮することが絶対に必要です。

 これはビジネス哲学の非常に重大な変化です。一部の企業はその重要性に気づくまでに時間がかかるかもしれませんが、顧客や若い世代が変化を要求しています。聡明で有能な大学卒業生を採用しようとする企業は、彼らがこの新しい哲学を持っていない企業には就職したがらないことに気づいています。

――スウェーデン人の少女のグレタ・トゥーンベリさんが2019年9月に開かれた国連の気候行動サミットでスピーチをしました。

ゴア トゥーンベリさんは、私たちが彼らの将来のことを考えていないのではないかと疑問に思っている若い世代の声を代弁していると思います。私もその場で彼女の話を聞きましたが、とても強烈なメッセージでした。それに対して、多くの人が彼女を攻撃していることも知っていますが、大人の男たちが10代の女の子を攻撃するのは恥ずかしいことだと思います。

トランプ大統領は変わらない

――最後にドナルド・トランプ大統領の政策について意見を聞かせてください。パリ協定から脱退する方針を撤回させるには、どうすればよいでしょうか。

ゴア アメリカの政治家は、海外で党派心があらわな批判をしないという伝統を守ってきましたが、私はもう政治家ではないのでいいしょう。

 私は個人的に、トランプ大統領と気候危機について話をするための努力をしてみました。彼に考えを改めさせられると思っていたのです。しかし私は間違っていました。今は彼が気候について考えを変えることはないと思っています。アメリカ最大の汚染者の一つである石炭産業と非常に親しい関係にあり、気候問題については彼ら以外の意見を聞かないからです。

 あと1年2カ月で大統領選挙があります。そのときに変化が起こり、アメリカが再び私たちが直面する状況について世界中の人々に真実を語れるようになることを願っています。