ミクロとマクロの視点活用

――PIMCOのESG投資をどのように実践していますか。

アルブレヒト ESG投資については大きく2つの取り組みがあります。まずはすべての投資においてESGを統合(インテグレーション)することです。PIMCOの運用プロセスは、ボトムアップとトップダウンの両面から見ています。

 個々の企業の分析にESG要素を取り入れるのがボトムアップです。一方のトップダウンは、グローバル経済の見通しや金融市場の安定性、中央銀行の政策などのほか、ESG要素が社会全体にどのような影響をもたらすかなどをマクロの視点で見ています。例えば、気候変動が個々の企業にどのような影響を与えるのかなどを考えます。

 もう1つは、クライアントである投資家とパートナーシップを組んで、ESGの成果を上げるためのソリューションをつくることです。例えば、温室効果ガスの排出を減らす効果があったり、積極的なエンゲージメント(発行体との対話)によって社会にプラスの変化をもたらす施策など、SDGsに沿った債券発行のお手伝いをしています。

 現在、この2つによって、ESG投資としてクライアントから預かっている資産の運用残高は約135億ドル(約1兆5000億円)に達します。

――インテグレーションの具体的な方法を教えてください。

アルブレヒト ESGポートフォリオ(資産配分)をつくるには、綿密なリサーチが重要です。それにはポートフォリオ・マネジャーやクレジットリサーチ・アナリストがこれまで培ってきた専門性を活用しています。PIMCOのクレジットリサーチの歴史は45年以上あり、アナリストは65人以上います。

 クレジットリサーチでは、従来の信用格付けスコアリングに加えて、PIMCOが独自に開発したESGスコアリングも実施しています。それには2つの特徴があります。1つはピアアセスメント(相互評価)で、各産業分野の同業他社と比較します。もう1つはトレンド分析です。過去ではなく、事業計画などに基づいて将来の動向を分析します。

 ピアアセスメントでは、各産業分野を担当するセクターアナリストがまず枠組みを構築し、クレジットリサーチ・アナリストが各セクターの重要なESG要素を選別します。従ってセクターごとにEとSとGの重み付けは変わります。例えば、公共事業ではEの重み付けが大きくなり、銀行業ではEよりもSやGの重みが増します。

 社債だけでなく、各国政府や政府関連機関が発行するソブリン債など債券の主だった分野で同様のESGスコアリングを実施しています。

――債券発行体へのエンゲージメントにも力を入れています。

アルブレヒト エンゲージメントについては、主に4つあります。まずクレジットリサーチ・アナリストが発行体の経営幹部と年間延べ5000回以上のミーティングを実施しています。その機会に持続可能性についても議論しています。2つ目は、サステナビリティボンドの発行体との議論です。例えばSDGsに整合した債券とはどのようなものかについて発行前に議論します。

 3つ目は、大手の投資家としてどのような情報開示を求めているのかを発行体に伝えることです。私たちは非財務情報の開示を推進する米サステナビリティ会計基準審議会(SASB)の設立メンバーの1社です。

 最後に、アセットオーナーや運用会社などの機関投資家が協力することでより大きな力を発揮できると考えています。例えば、気候変動対策を推進する投資家のイニシアチブ「クライメート・アクション100+(CA100+)」に参加して、世界の大手石油・ガス企業などに働きかけています。

――ESG投資は、儲かるのでしょうか。それとも、社会的なインパクトを重視しているのでしょうか。

アルブレヒト 通常のリサーチにESG要素を統合することは、受託者責任を果たす意味でも必要だと考えています。ESG分野であるかどうかは別として、すべてのリスクと機会を見て、長期的により良いリターンを生み出すことにつながるからです。