馬場 未希

再エネを利用し、企業競争力を高める機会としようとする企業が現れた。それに応える電力会社の対応は十分ではないが、変化の兆しもある。

 リコーは主力製品であるA3複合機の製造で使う電力を再生可能エネルギーで賄う。中国、タイ、そして日本の同社工場で2019年4月以降に製造した複合機の組み立て工場が対象になる。使用電力量を明らかにしていないが従来の電力料金と比べおおむね2割のコスト増とみられる。

A3複合機を製造するリコーの中国生産子会社。再エネ100%に切り替える
(写真:リコー)

CSRではなく「販促費」

 なぜ、リコーはあえて高い電力を買うのか。一時的にはコスト増となるが、将来の収益拡大につながると考えるからだ。本業を成長させる「決め手」と捉えている。「再エネ電力を使うのは、顧客から選ばれる製品を提供するというビジネスチャンス(機会)をものにするため」と、リコー・サステナビリティ推進本部の阿部哲嗣・社会環境室長は話す。

 顧客であるドイツの大手企業が2018年、タイ工場を監査に訪れた。顧客企業からの「毎年のCO2削減率は」「中期の温室効果ガス削減目標は」といった問いに答え、高い評価を得た。一方で顧客企業とリコーとで改善点を決め、毎月進捗を報告することになった問いもあった。

 電力需要を再エネ100%で賄うことを求められたわけではない。とはいえ顧客企業が、複合機が製造される時のCO2排出に関心を持ち、高い水準の改善を求めるのを目の当たりにし、他社に先駆けて再エネで製品を作れば、競争力になるとの判断に至った。販売部門からも、再エネ利用は付加価値として顧客に評価されるとの意見が上がっていた。

 日本の2工場、中国の2工場、タイの1工場のうち3カ所は他の製品も含む工場全体、2カ所はA3複合機を組み立てる社屋のみが対象になる。まず日本では「再エネJ-クレジット」を使う。国内の再エネ発電プロジェクトによるCO2削減量を基に国が発行する日本独自の排出枠だ。中国とタイでは「I-REC」と呼ぶ仕組みで取引する現地の再エネ証書を買って使用電力量を相殺する。

 リコーは2017年4月にそれまでの2050年目標を見直し、新たな温室効果ガス削減目標を設定した。2030年までに自社内のスコープ1と2排出量を2015年比で30%減、取引先を含めたスコープ3排出量を同年比15%減にし、2050年までにすべての排出をゼロにする。目標は、科学的知見と整合する削減目標(SBT)であると認定された。

 再エネの利用拡大は、削減目標を達成する取り組みの1つに位置づけられる。自社拠点での省エネの徹底と同時に、2030年までに使用電力量の少なくとも30%、2050年までに100%を再エネにする。A3複合機工場への導入はその一歩だ。2018年度にリコーの使用電力量の18%が再エネ電力だったところ、2019年度は20%に達すると見込む。

 2017年には日本企業で初めて、事業活動に必要な電力需要の100%を再エネで賄うことを目指す企業のイニシアチブ「RE100」に参加した。

 日本での先端事例と言えるが、阿部室長は「リコーが再エネを使う目的は、RE100や削減目標をいち早く達成することではない」と強調する。同社の省エネ・脱炭素型の製品・サービスの販促に生かし、収益拡大につなげることが目的だ。

 A3複合機の他にも、象徴的な例がある。グループの国内販売会社、リコージャパンの岐阜支社が2019年3月に移転した新社屋だ。

 新社屋は太陽光発電システムや蓄電装置を導入した。建屋は断熱性の高い建材やガラスを採用し、照明や空調の自動制御システムも活用して省エネを徹底して4~6月の再エネ比率は43%に達した。この新社屋は、グループが提供する太陽光発電のO&M(運用・保守)サービスなどを業務で使い、その良さを顧客に紹介するショールームの役割を担う。

リコージャパン岐阜支社の新社屋(右上)と社屋屋根の太陽光パネル(左下)
(写真:リコー)