投資家は成長ストーリーを望む

 2015年のパリ協定の策定、2018年のIPCCによる「1.5℃特別報告書」の発行を経て、今世紀末の気温上昇を2℃より十分に低く、1.5℃に近づけられるまでに気候変動対策を強化する機運が高まりつつある。

 日本企業も、欧州を中心に投資家や顧客企業、市場、SBTやCDPなどNGOからの要請が強まり、選ばれるための気候変動対策の必要性を肌で感じている。

 しかし、2℃や1.5℃に見合う大幅な削減は、決して省エネだけで成し得るものではない。使うエネルギーの脱炭素化が必須だ。しかし、CO2排出ゼロの電力供給を担ってきた原子力発電所の利用率は日本や一部の国で大きく縮小。気候変動対策の強化を迫られる企業にとり、再エネは現実的な選択肢となった。

 企業が自主的な気候変動対策に再エネを利用して企業価値の向上を図るケースが増えたことから、経済産業省は2019年3月、温暖化対策推進法と、CDP、SBT、RE100に準拠する再エネ利用方法を整理した「国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関するガイダンス」を発表した。これによれば、国内では下の図に示す7つの方法で再エネを利用できる。

■ 再エネを活用する7つの方法
「事業所の敷地」は「需要が発生する場所」のこと。「非FIT」は、FIT制度を利用して電力会社に発電した電気を売っていない発電設備を指す FIT=再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度
(出所:経済産業省「国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関するガイダンス」を基に作成)
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 ただ、単にCO2削減を目的に再エネを使うのでは、NGOなどが評価しようとも投資家には響かない。

 機関投資家である第一生命保険はESG投資をいっそう強化するため、気候変動のリスク・機会を加味した投資先企業の価値評価を検討中だ。

 同社で運用企画部部長を務める竹内直人・運用調査室長は、「単に環境貢献で再エネを導入するというよりは、中長期の財務にプラスの影響をもたらすストーリーを説明することが、企業価値評価の向上につながるとみている」と指摘する。

 環境保全やCSRを目的とし、事業の成長や収益の拡大に貢献すると説明できる取り組みは、企業価値を向上させるとの評価につながる。

 資産運用会社のゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント運用本部スチュワードシップ責任推進部の小野塚惠美部長は、「再エネを利用する意義は何か、自社のマテリアリティ(重要課題)を評価し、将来の財務、事業ポートフォリオに良い影響を与える取り組みであることを投資家らに伝えてほしい」と話す。

 リコーは再エネの調達を、削減目標の達成手段としてだけでなく事業拡大に使う考えが明確だ。他に例えば丸井も、再エネの利用を新たなビジネスの機会として、戦略的に生かす方針である。