「非化石価値」取引に期待

 2019年からは再エネ設備の種類や所在地といった情報を明示した「トラッキング付き非化石証書」の取引も始まった。条件の厳しいRE100でも使える(下の表)。

■ 日本のクレジットや証書は国際的に認められている
「温対法」は「温暖化対策推進法」、「SBT」は「科学に整合した温室効果ガス削減目標」のこと
(出所:経済産業省「国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関するガイダンス」)

 自然電力(福岡市)は非化石証書を使う電力メニューに力を入れる。同社は70カ所を超す太陽光や風力発電などFIT売電事業を展開し、総出力は約46万1300kWに及ぶ。

 同社はFITでいったんは売った電力と、非化石証書を市場で調達して組み合わせた実質再エネの電力メニューを企業や家庭向けに提供する。

 2019年6月に長野県で開催した20カ国・地域(G20)エネルギー・環境関係閣僚会合には、中部電力と協力して電力を供給した。自然電力子会社が長野県小布施町に所有する小布施松川小水力発電所の電力とその非化石証書をセットにした、実質再エネ100%電力が会合運営に使われた。

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6月に長野県で開催したG20エネルギー・環境関係閣僚会合(左)では、県内にある小布施松川小水力発電所(右)など地元の再エネを生かした電力が供給された
(写真左:経済産業省、環境省 写真右:自然電力)

 自然電力の実質再エネ100%メニューを採用した企業の約45.3%で、東京電力エナジーパートナーの一部メニューと比べて電気代が安くなった。実質再エネ30%のメニューでは、同約85.7%が安くなったという。

 一般に、再エネ電力の単価は大手電力会社の従来単価の1.2倍が今の相場。自然電力は基本料金と従量料金で構成する電気代のうち基本料金をコストダウンして割安にできた。

 だがこうした事例はごく一部だ。RE100メンバー会をはじめ多くの企業が、再エネ調達のコスト高と選択肢の乏しさを嘆いている。再エネ調達をビジネスチャンスや企業価値向上につなげ、競争力を高めたい需要側企業の声に、電力業界や監督省庁は真剣に耳を傾けるべきだ。

「日経ESG」(2019年9月号)では、他国と比べて再エネ調達に足かせが多く残る日本で、再エネ電力100%を達成したアップル、それに続こうとする日本企業の奮闘などさらに詳しく紹介しています。