馬場 未希

気温上昇1.5℃と2℃では、気象や対策コストにどのような違いが生じるのか。日経ESG経営フォーラムが開催したセミナーを3回連載で報告する。

 「世界平均気温の上昇を産業革命前よりも2℃を十分に下回るようにし、1.5℃の水準に制限する」。これを求めたパリ協定が2015年に合意されて4年。ここにきて欧米の企業やNGO、国際イニシアチブが、気温上昇を1.5℃にとどめる「1.5℃目標」に関心を示し、取り組み始めた。

 注目したいのは、企業に対し「科学に整合した温室効果ガス削減目標(SBT)」の設定を求める国際イニシアチブ「SBTイニシアチブ」だ。これまで気温上昇を2℃に抑えるのに見合う目標設定を求めていたが、10月から「2℃を十分に下回る目標(Well Bellow 2℃、WB2D)」または1.5℃目標の設定を企業に求める。

 このような中、日本企業にも既に社内で合意し社外に公表した2℃目標を見直し、1.5℃目標を検討するケースが見られるようになった。

1.5℃を目指す根拠は何か

 だが、1.5℃を目指すなら、2℃よりも厳しい削減目標と、省エネや再生可能エネルギーの利用などといった対策の強化が求められる。

 「なぜ1.5℃を目指すのか。2℃では駄目なのか」─。経営者や事業部門からこう問われ、説得力を持って答えられるESG担当者は多くないだろう。パリ協定が1.5℃を求めているといっても、パリ協定は個別の企業に取り組みを求める条約ではない。また、「国際社会の潮流」といった曖昧な言葉では、経営者や従業員が納得しないだろう。

 「日経ESG」と日経ESG経営フォーラムは「1.5℃と2℃では何が違うのか」という疑問に対し、地球環境や気象、農畜産物や工業への打撃、国際社会やESG投資家の要請などの情報を集めた連続セミナーを2019年7〜9月に開催した。

日経ESG経営フォーラムが開いたセミナー第1回の様子​
(写真:鈴木 愛子)

 この記事では、「1.5℃と2℃の違いを知る」と題して7月に開催した、第1回の講演を紹介する。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年10月に発行した「1.5℃特別報告書」の執筆者の1人である地球環境戦略研究機関(IGES)の甲斐沼美紀子研究顧問と、日本の長期戦略を検討したメンバーの1人である持続性推進機構の安井至理事長、そして、気象変化による農産物などへの影響を研究するみずほ情報総研の高野真之コンサルタントを招き、講演してもらった。