馬場 未希

1.5℃を巡り国際社会はどのような動きを見せているのか。日経ESG経営フォーラムによる連続セミナーの第2回を報告する。

 気候変動による世界平均の気温上昇を1.5℃の水準に抑える「1.5℃目標」に、世界の関心が高まっている。

 2019年9月、米ニューヨークで開催され世界の首脳らが参加した国連の「気候行動サミット」、そして世界の自治体、都市、企業、金融機関・投資家、NGOらが参加した「クライメートウイーク」。ここでは2050年に温室効果ガス排出量を「実質ゼロ」にする必要性を訴える声が高まった。

 「2050年の排出実質ゼロ」は1.5℃目標の実現に不可欠という。世界の気候変動に関する研究や知見をまとめる国連組織、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2018年10月に発表した「1.5℃特別報告書」が明らかにした。

 「気候変動は危機的状況にある」。こう考える世界の国の首脳陣、そして「非国家アクター」と呼ばれる自治体や都市、企業、NGOが1.5℃目標に狙いを定めようと声を上げた。

1.5℃を目指しているのは誰か

 2015年の気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では、後発途上国や島しょ国などからの賛同を取り付ける交渉上の取引を目的に、パリ協定にこの目標が書き込まれた。とはいえ実現のハードルの高さから「1.5℃に気温を抑えるなど、非現実的なきれい事」との見方が大勢だった。これが今、なぜ国際社会で支持され、目標として採用されるようになったのか。

 「日経ESG」と日経ESG経営フォーラムは、1.5℃目標を巡る情勢を知るための連続セミナーを2019年7〜9月に開催した。この記事では8月のセミナーの模様を報告する。この回では、COPを舞台とする気候変動交渉を長らく見てきた東京大学の髙村ゆかり教授、この交渉を市民社会の代表として見てきた世界自然保護基金(WWF)ジャパンの小西雅子・専門ディレクターを招き、パリ協定の締約国や自治体、企業などの非国家アクターが1.5℃目標を受け入れ、自らの目標として目指すようになった背景を話してもらった。

 講演からは、実現が困難とされ、また交渉における駆け引きの末に書かれた1.5℃目標が、国や企業によって自らの目標として採用され始めた背景が分かる。企業は、自社の目標として採用するかどうかはさておき、顧客や消費者、市場、投資家らが1.5℃を意識した行動を取る可能性があると念頭に置くべきだ。

2019年8月に開いた第2回セミナーでの講師と会場の聴講者による質疑。写真左からWWFジャパン小西雅子氏、東京大学髙村ゆかり氏
(写真:鈴木 愛子)