1.5℃目指す日本や欧州

 パリ協定の締約国は2020年までに、各国の現在の目標を見直して再提出するとともに、2050年をめどとする長期戦略を提出することが求められている。

 日本も2019年、2050年までに温室効果ガス排出量を80%減らすという従来の目標を再確認した上で、今世紀後半のできるだけ早期に「排出実質ゼロ」として脱炭素社会の実現を目指すという長期目標を盛り込んだ長期戦略をまとめた。この策定に当たっては私自身も有識者会合の委員として関わったが、排出実質ゼロ、脱炭素社会をできるだけ早期に目指す、大変野心的な目標を設定したと思っている。

 戦略策定の議論には産業界、経済界などの代表も有識者会合のメンバーとして参加したが、「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会の実現」を目指すとのビジョンを掲げることに異議を唱える人はいなかった。パリ協定の1.5℃も含む長期目標の実現に向けて「日本の貢献を示す」ことも言及された。

 また近年、2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを政策目標としたり、さらに目標を法定化したりする国が増えた。スウェーデンは2045年の排出実質ゼロを法律で定めた。米カリフォルニア州は2050 年で法定化した。英国、欧州連合(EU)、フランスも、2050年排出実質ゼロの法定化を進めている。

 なかでもEUは、1.5℃目標を念頭に2050年排出実質ゼロを長期目標にする作業を進めている。また、投資家や金融機関に対し、投融資を気候変動対策に配分する動きを加速するため、サステナブルな事業活動に対するグリーン投資を促す制度を検討している。2050年排出実質ゼロ、つまり1.5℃目標達成に貢献する事業や企業への投資が加速することを促す内容である。

■ 「排出実質ゼロ」目指す海外の主な例
講演時の資料を基に作成した。情報は随時更新される
(出所:髙村氏の資料、各国資料)

 このように世界で2050年に排出実質ゼロを目指す国や地域が続々と現れている。これはパリ協定の1.5℃目標に加えて、IPCCの1.5℃報告書などに示された科学的知見の深化、そして、近年の異常気象など気候変動の影響に対する懸念の高まりによるものだと見ている。