半澤 智

投資を呼び込むESGの情報開示や対話の在り方とは。ESG投資を実践する機関投資家に質問をぶつけた。

 日経ESG経営フォーラムは2019年11月18日、第1回「投資家対話研究会」を開催した。本研究会は、2020年1月にかけて3回シリーズで、「対話」の極意を学ぶ。その内容を紹介していく。

2019年11月18日に開催した第1回「投資家対話研究会」の会場風景
(写真:中島 正之)

 第1回は、野村アセットマネジメント責任投資調査部長の今村敏之氏と、BNPパリバ・アセットマネジメントCEO・代表取締役社長の土岐大介氏を招き、ESG投資の最新動向や実践方法、投資家と企業の対話の在り方などを話してもらった。また、講演後は、参加者が疑問や本音をぶつけた。講演と対話の様子をダイジェストでお伝えする。

野村アセットマネジメント 責任投資調査部長 今村 敏之氏

今村 敏之 氏
野村アセットマネジメント 責任投資調査部長(写真:中島 正之)

 野村アセットマネジメントは、運用資産残高51兆4000億円の国内最大級の資産運用会社です。2019年12月に創立60周年を迎えました。国内にいるアナリストやESGスペシャリストは約40人で、日々、企業の方々と対話をしています。

 2019年3月にはESGステートメントを公表しました。企業に求める重要課題として、気候変動、自然資本、社会的責任の3つを定め、自社もこれらを重視した事業運営を目指します。

 企業とのエンゲージメントでは5つのテーマを設定しています。①事業戦略、②財務戦略、③環境・社会、④ガバナンス、⑤情報開示・対話です。3年間というタイムスケジュールで目標を設定して対話に臨みます。現時点で約2400社の株式を保有しており、投資先企業とのミーティングは年間約5500件、ESGをテーマとしたミーティング実施数は、年間340〜350件ほどです。

キャッシュを生むか

 企業を評価するに当たっては、将来の利益、つまりキャッシュフローに注目します。今の財務情報が過去の非財務の取り組みに基づいているように、今の非財務の取り組みが将来の財務情報につながるかという点を見ます。重要なのは、単に「ESGに対応しました」という説明ではなくて、ESGの取り組みが長期的にキャッシュフローを生み出すと示すことです。

 企業がESGの取り組みを進めると、短期的にはコスト要因となりますが、一定期間を経過すると財務パフォーマンスが向上する「Jカーブ効果」が生まれます。ただ、日本企業は、ESG評価が高い企業ほど財務パフォーマンスが低くなるという結果が出ています。日本企業のESG経営は始まったばかりで、Jカーブ効果の初期段階に位置しているのかもしれません。ESGの取り組みがコスト要因になっており、収益に結びついていないということもあるでしょう。大切なのは、Jカーブ効果につなげるという経営マインドが企業にあるかどうかです。一時のコストに終わらせずに、将来の財務パフォーマンスにつなげる努力をしているか。ここが最も重要です。

 企業のESGの取り組みは、独自にスコアを算出しています。株式の場合、分析項目を決めて、環境が全体の30%、社会が30%、ガバナンスが30%、SDGsが10%になるようにしています。SDGsは、事業への貢献度と企業の競争力を分析します。こうした評価を、金融商品づくりにも生かしています。