ダイベストメントは「失敗」

 企業との対話例をご紹介しましょう。フランスで鉄道車両の製造などを手がけるアルストムの例です。同社はかつて、ESG関連の情報開示が低い企業でした。しかし、エンゲージメントのなかで、経営陣の報酬制度の改善や買収防衛策の排除といった懸念点を伝えていくことで、多くの問題点が改善されました。今後も、対話によって課題が改善されると期待して、投資を継続しています。

 続いて、スイスの建築資材メーカーのラファージュホルシムの例です。2016年6月に、同社がシリアのテロ組織の資金調達に関与したという報道が出ました。そこで2回にわたってエンゲージメントを実施した結果、取締役の解任や再発防止策の策定につながりました。しかし、同社の対応は、高いリスクを管理するには不十分と判断して、投資除外(ダイベストメント)を決めました。

 こうしたダイベストメントは、エンゲージメントの失敗だと思っています。運用会社としては、ダイベストメントは最終手段であるべきだと考えています。

 情報開示に基づいて、運用会社がどのように評価して投資判断に生かしているのかというフレームワークは、欧州でもまだ出来上がっていません。対話の蓄積によって日本流のフレームワークをつくり上げていくのが望ましいと思います。

 エンゲージメントは、企業の透明性を高めたいという意識があるかどうかが大事です。これは投資家だけでなく、企業にとってもプラスになると考えています。

強みや成長分野はっきりと

参加者:海外投資家は、日本企業の評価が低いような気がします。

野村アセットマネジメントの今村氏(写真:中島 正之)
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土岐:ESGに取り組んでいるのなら、それを明確に伝えることが大切です。また、強みや今後伸ばしていきたい事業分野をはっきりと伝えることも大切だと思います。

参加者:対話でESGの質問がほとんどないケースがある一方、詳細に聞かれるケースもあります。運用会社によってインテグレーションの度合いが違うように感じます。

土岐:ESGの評価に外部データを使い、評価済みだから対話では聞かないという投資家もいます。ESG情報をどのように使うかは、運用会社によってスタンスがさまざまです。逆に、運用会社に「ESG投資についてどう考えていますか?」と聞き返してみてもよいと思います。

参加者:取締役のダイバーシティー(多様性)に関するお考えを聞かせてください。外国籍の取締役の登用は、日本ではなかなか難しいです。

土岐:ハードルが高いのは理解しています。株主の外国人比率が高まっている企業が増えており、こうした企業は徐々に準備を進めていく必要があると思います。

参加者と講師の対話の様子
(写真:中島 正之)