投資家も人材戦略を重視

 投資家も企業の人材戦略をより重視するようになっている。ニッセイアセットマネジメントチーフ・コーポレート・ガバナンス・オフィサー上席運用部長の井口譲二氏は、「人材育成や良い人材の獲得は、企業戦略の達成や企業価値向上と関連性が深く、投資家にとっても重要事項となる。経験上、社会の期待に応えるような理念を掲げ、実践している企業ほど、社員はやりがいを感じ、より企業価値向上に努めるのではないか。この意味で、SDGsの考え方を経営戦略に取り入れていくことも重要となる」と指摘する。

 ゴールドマン・サックス証券証券部門株式営業本部業務推進部長スチュワードシップ・コーポレートガバナンス担当の清水大吾ヴァイス・プレジデントは、「株主や従業員と同じく、将来世代も企業にとって重要なステークホルダーだ。環境や社会課題に取り組むのは当然のことになってくる。将来世代を獲得するためには、社会にとって必要な企業であるかをいかに理解してもらうかに尽きる」と話す。

 清水氏は、インベストメントチェーンが正しい方向に動く(環境や社会にも貢献する企業にお金が流れる)ようにとの思いから、お金の出し手である個人投資家を対象にSDGsの啓発活動を展開している。その一環として2016年から中・高・大学生向けセミナーを開催している。受講した学生は延べ400〜500人に上る。「自分が働くなら商品を胸を張って薦められるところがいい」といった声が寄せられている。

ゴールドマン・サックス証券の清水大吾氏が、SDGsの啓発活動の一環で開催している中・高・大学生向けセミナー。これまでに延べ400〜500人が受講した<br><span class="fontSizeS">(写真:ゴールドマン・サックス証券)</span>
ゴールドマン・サックス証券の清水大吾氏が、SDGsの啓発活動の一環で開催している中・高・大学生向けセミナー。これまでに延べ400〜500人が受講した
(写真:ゴールドマン・サックス証券)

 人材は採用して終わりではない。入社した後に育成し、やりがいを持って働ける環境を提供することが、個人の能力を引き出し、さらには離職を防ぐことにもなる。「自分で課題を見つけて取り組む意欲がある若者に活躍してもらうためには、その人の能力に合った機会を与えられるか、自由度を持たせられるかがカギになる」(小田原氏)。

 企業の経営戦略を実行するために、どんな人材が必要で、どう育成、活用していくのか。「人材戦略を組み立てて実行するのは執行の役割だが、持続性を担保するためには取締役がしっかり監督する責任がある。人材戦略はつまるところガバナンスの話になってくる」(井口氏)。

「日経ESG」(2019年10月号)では、大手企業で活躍する若手社員の紹介、起業した若手経営者の人物像、「SDGsネイティブ」をいかに社員として採用したり、社会起業家と連携したりするか、知恵を絞る企業の動向など、「SDGsネイティブ」についてさらに詳しく紹介しています。