企業の存在意義は「社会貢献」

スコット キャロン氏
スコット キャロン氏
いちごアセットマネジメント 社長(写真:中島 正之)

 企業は、事業を通じて社会に貢献するという使命があります。使命を遂行し、社会に貢献した報酬として社会から与えられるのが適正利益です。企業の存在意義は「社会貢献」であり、それ以外はありません。社会的責務を果たしたうえで、正しく利益を創出する。この順番を重視しています。

 企業を評価する際には、「企業の成長が社会に貢献するか」という点を重視します。事業が成長すると見込んでも、それが自然環境や人間に害を及ぼすであろうものには投資しません。企業のESGの取り組みについては、本業に直結しているかどうかに注目します。

 「ESGの活動が投資リターンにつながるのか」という質問を受けることがよくあります。私たちは、ESGと投資リターンは切り離して考えています。まずは企業のESG要素を見てその企業の「正しさ」「優しさ」を確認します。その上で、企業価値を算定します。

 企業価値の指標の1つに株価純資産倍率(PBR)がありますが、これは企業の資産という1つの側面を示しているにすぎません。私たちが考える企業価値は、「資産価値と事業価値と人材価値の総和」です。資産というモノだけでなく、成長事業を持っているかと、人材の質や量が確保されているかも考慮します。経営トップとのエンゲージメントでは、必ずこの考えを伝えます。

 同時に企業価値は、「顧客価値と社会価値と株主価値の総和」でもあると考えています。これらは同時に向上を目指すべきで、どれかを犠牲にしていいというものではありません。顧客のためにコスト削減をしたとして、それが環境や社会のためになり、最終的に株主価値につながることが重要です。

社外取締役を対話に

 E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)はそれぞれ重要ですが、その中で企業価値をつくるのは、ガバナンスです。環境や社会の取り組みが正しく行われるかどうかは、企業のガバナンスにかかっています。ガバナンスは、自然資本や社会資本の活用を支える基盤です。資本を正しく活用し、次世代につなぐという観点でも重要です。

 エンゲージメントで企業にお願いしたいのは、社外取締役との対話です。欧米では当たり前ですが、日本ではまだまだです。日本企業でこれを実践できているのは、上場企業の2%程度だと思います。社外取締役は、株主の代表であり、社員の代表でもあります。「会社を代表して話せない」と思っている人が多いかもしれませんが、むしろ個人の視点で積極的に語ってほしいです。

 経営者の後継者計画にも注目します。その際、経営トップの選任のプロセスだけでなく、退任のプロセスがあるかどうかが重要です。経営トップに求める要素を定め、どういう状態になったら経営から退いてもらうかを定めておく必要があります。これは、優秀な経営者がいつまでも活躍できる環境を整えることにもつながります。

 企業に経営責任があるように、株主にも株主責任があります。株主総会で議決権行使の権利を持っているのは株主だけですが、環境や社会を含んだすべてのステークホルダーの価値向上という観点から議決権を行使します。こうすることで、株主責任を果たしていきます。(談)