「自社らしさ」を重視

参加者:「モノ聞く株主」とはどういうことでしょうか。どのように企業価値向上を図るのでしょうか。

キャロン:「モノ言う株主」のアクティビストは企業にプレッシャーを与えて変革を促しますが、私たち「モノ聞く株主」は変革を探します。その変革が株価に織り込まれていないと判断できれば、変革を実行することで株価の向上が見込めます。価値創造の主役は企業です。

参加者:企業との対話の際、注目していることは何でしょうか。

キャロン:その企業の「自社らしさ」に注目します。例えば、終身雇用制度に基づいた人事制度や経営者の選任など、日本企業のガバナンスは海外投資家には独特に映ります。しかし、これは強みでもあります。自社の事業を知り尽くした経営者が旗を振ることで、会社に一体感が生まれます。対話を通して、他社にないその企業の強みを探ります。

参加者:企業に「正しさ」や「優しさ」を求めています。具体的に企業のどのようなところを見るのでしょうか。

キャロン:経営トップだけではなく、社外取締役や社員など、時間をかけていろいろな人に話を聞きます。その際、同じ質問をします。例えば、「この会社についてどう思うか」「活動で何を重視しているか」などです。企業の正しさや優しさは、これらの回答に表れます。回答にばらつきがあったら、やや注意です。その場合は、経営陣にフィードバックします。

参加者:対話では、1対1の対話を重視しているのでしょうか。ESG説明会のような1対多の対話は重視しないのでしょうか。

キャロン:企業を知るためには1対1の対話が望ましいですが、対応には限界もあります。ESG説明会のような対話ももちろん重視します。その際、ESGの取り組みが本業起点になっているかどうか、具体的な内容があるかどうかに注目します。

企業価値向上の秘訣は――。参加者からの質問に対してキャロン氏が答えた<br><span class="fontSizeS">(写真:中島 正之)</span>
企業価値向上の秘訣は――。参加者からの質問に対してキャロン氏が答えた
(写真:中島 正之)

日本株は過小評価

参加者:日本企業の株価は海外企業に比べて低いように思います。日本企業に潜在力はあるのでしょうか。

キャロン:もちろんあります。米中貿易摩擦や英国のEU離脱など、世界的に不安定な状況にあります。こうした中、日本には圧倒的な安定性があります。収益力を強化していけば、日本株式が過小評価されていることが明らかになるでしょう。これを示すのが私たちの役割でもあると思っています。

参加者:企業の「価値創造ストーリー」は、どのような点を評価しますか。

キャロン:株価は、「1株当たりの純利益(EPS)×株価収益率(PER)」で算出できます。PERは株価が割高か割安かを測る指標で、企業の持続性、安定性、成長性、透明性という要素が絡んでおり、価値創造ストーリーはこれらの要素を含んでいます。決算説明会などでもこれらの要素を意識して説明すると、中長期的な投資家が入っていきやすいです。

参加者:海外投資家に評価されるために、企業は何をすべきでしょうか。

キャロン:資本市場にもブランドがあります。日本市場は、ESGの取り組みは進んでいるが、株主価値の創造という点では遅れていると見られています。ESGの取り組みが、株主価値であるROE(自己資本利益率)につながるというメッセージを送ることが大切です。