ESG経営で会社を倒産の危機から成長軌道に復活させた丸井グループ(日経ESG2020年1月号特集記事を参照)の青井浩代表取締役社長が、ESG経営の更なる普及のために各分野の達人にESGの神髄を聞く

「ESGはコストではなく投資」を本格的に実践する花王の澤田道隆社長。2回にわたって紹介する対談の前編では、なぜESGを経営の中心に据えたのかを聞く。

青井 2012年に社長に就任されて、最初は「脱デフレ型成長モデル」や「ガバナンス改革」に取り組まれ、基盤構築を完了されました。そして今、2025年や30年に向けた新しい基盤づくりの要として「ESG」を位置づけられていると理解しています。どうしてそのようにお考えになったのですか。

業績から企業価値に

澤田 道隆(さわだ・みちたか)
花王 代表取締役 社長 執行役員
1955年生まれ、大阪府出身。81年大阪大学大学院工学研究科修了後、花王に入社。2006年に執行役員 研究開発部門副統括に就任、08年取締役、12年に代表取締役社長執行役員(現職)、研究所長時代、ベビー用紙おむつ「メリーズ」の再生を指揮(写真:鈴木愛子)

澤田 自分が社長になったときに「企業とは何か」「企業の役割は何か」をいろいろ考えたんですね。もちろん、利益を出し、社会の公器として税金を払い、雇用を生み出すことは非常に大切です。一方で、われわれは身近な製品をたくさんのお客様に買っていただいています。「豊かな生活文化の実現」「社会のサステナビリティに貢献する」という企業理念の本質のど真ん中のところを社内に根づかせないといけないと思ったんです。

 そのときに、利益を出してそのなかから何かをやる社会貢献のような立て付けではなく、社会にいろいろな意味でお役に立つことが結果として利益ある成長につながるんだというところに持っていきたい。極端に言うと、業績を重視する会社から、企業価値を重視する会社になっていくべきだと考えました。

 ESGや社会へのお役立ちにいきなり来る前に、まず取り組んだのが資産の最大活用です。これには、人の資産もありますし、会社として歴史的に諸先輩がつくり上げてきた資産、特許を含めた無形資産、もちろん財務的な資産も含めて、いろいろな資産があります。その資産を使い切っていないなかで、考えているところに到達するのは無理だと思ったのです。

 まずは会社を成長させるために積極的な投資をしてリターンを得る。脱デフレ型成長モデルというのは、積極投資によってわれわれが成長することです。

 ただ、積極投資というと、無理をしかねないですよね。資産の最大化と最大活用のためには、ガバナンスを最大限に利かさないといけないということで、取締役会の立て付けを全部変えたんです。取締役を社内・社外を含めて10人以内に抑えて、議論をどんどんできるような形に変えました。ここまでが第一弾です。

 これがようやくできつつあるので、第二弾として今、進めているのが企業価値向上に向けた取り組みです。その中心になるのがやはり「ESG」だと考えています。