延長線上に実は線はない

青井 目標が業績から企業価値に移ったときにESGを中心に取り組んでいこうということになったのですね。私が興味深かったのは、澤田社長が「ESGに取り組んでいくとビジネスの領域を拡大していけるんだ」とおっしゃっていたことです。

澤田 そうですね。第一弾は自分がイメージしたものに近い方向で何とか進めることができました。資産の最大活用が社員一人ひとりのイメージでもかなりできてきつつあるなと思います。売り上げ・利益の成長という結果よりも、これが一番の大きな成果ですね。

 そして今度はESGに投資していこうと考えています。ESGに進むと余計なコストがかかり、利益が出ないのではないかとよく言われますよね。しかし、ESGにだってわれわれは投資します。回収期間がどれくらいかは別にして、ESGに投資することによって持続的な成長につながるという事例を絶対につくろうと考えています。

 2019年9月に「花王グループの新たな挑戦」ということで、われわれのESGの考え方について決意表明する会を開きました。ESGという視点で取り組むことで、われわれの事業の中心である「清潔」「美」「健康」の事業領域が広がり、それが持続的な成長の拡大につながるという絵を示し、ESGはコストではなくて投資なんだとお話ししました。

 例えば「美」と「健康」を突き詰めると「治療」というような領域に入るんです。化粧品と言っても、薬事申請のレベルを上げていくと医薬部外品なんですね。それで、医薬部外品をさらに進めると、医薬品の世界に入ります。実際にわれわれの化粧品でいろいろトライしているもののエビデンスを見てみると、けっこう医薬品レベルの結果が出ています。

 ただ、われわれは今それを医薬品として売っていない。ひょっとしたら、日用品・家庭品・化粧品のメーカーの方向から治療・医療を考えると、違うことができるのではないかというわけです。

青井 すごく面白いですね。ESGで新しい視点から見ることによってビジネスが広がるとか、ESGはコストではなくて究極的に投資なんだとおっしゃる方はけっこういらっしゃるんですが、澤田社長のように実際にビジネスになるんだと実感して実践されている方は少ないと思います。どうしてそこにピンと気づかれたのですか。

澤田 そうですね。事業というのは、ややもすると従来の延長線上で考えがちですよね。ちょっとずつ改善していくと次につながるのではないかと思っている人がいますが、これは大きな間違いです。だいたい行き着く先が見えていて、大きくも小さくもならない。それで、いずれは世の中の変化の波にのまれて滅びてしまう。延長線上には、実は線がないんですよ。だからどこかで跳ばないといけないんですね。

 丸井グループも大きく変えなくてはいけないタイミングで青井社長はぐっと変えられましたが、やはり50年、100年とつながっている会社は、一直線に来たわけではなく、必要なタイミングでポンと跳びながら来ているわけですよね。チャレンジをしている。私も先輩からよく言われたのは、「おまえが社長になるのならどこかで跳べ」と。それがやはり社長として絶対やらないといけないことだと思います。