再エネやビル建設で利用

 グリーンボンドの発行例をご紹介しましょう。

 19年3月に東京建物がグリーンボンドを発行しました。発行額は500億円です。東京都豊島区の再開発高層複合施設「Hareza池袋」などの建設資金に充当されています。このビルは、建築環境総合性能評価システム(CASBEE)のSランクに相当する施設です。

 19年4月にトヨタファイナンスが発行したグリーンボンドは、クリーンエネルギーに注目した例です。発行額は600億円です。同社は自動車ローン事業を手掛けており、トヨタ販売店の販売を支援しています。グリーンボンドの資金使途を、プラグインハイブリッド車や燃料電池車などの電動車の販売に限っているところがポイントです。

 大和証券グループ本社でも18年11月にグリーンボンドを発行しました。再生可能エネルギー発電プロジェクトやグリーンビルディングの投融資に100億円を調達しました。太陽光発電プロジェクトなどへの投融資を進め、年間4万6000tのCO2削減を見込んでいます。グリーンボンドを発行したビジネスを自ら展開することで、投資家への認知を図る目的もありました。

投資家のアピールにも

 最近は、投資家がどの企業に投資したか宣言するケースが増えています。東京建物では、グリーンボンドを購入した投資家の一覧をウェブサイトに掲載しています。投資家にとってみれば、ESGを重視した投資姿勢のアピールにつながります。最近は、こうした投資表明ができるかどうかを確認してから、債券の購入を検討する投資家も出ています。

 SDGs債市場の拡大には、課題もあります。資金使途の選定、外部評価、発行後の管理など、発行体と投資家の双方に追加の事務負担が発生します。また通常は、グリーンボンドだからといって、クーポン(債券の利率)が、他の債券と比べて低くなることはありません。

 これまで債券の発行は、主に企業の財務部門が担っていました。グリーンボンドは、環境部門やCSR部門、経営企画部門など、複数の部門が関わります。もちろん、経営者のリーダーシップも必要になります。大和証券では、発行体企業と投資家をつなぐ役割を果たしていきたいと考えています。(談)

課題は「現場主導」

参加者:今後、グリーンボンドの発行が拡大するとしたら、何がきっかけになるのでしょうか。

清水:グリーンボンドを発行した企業は、経営トップが決めているケースが多いです。社債の発行は、財務部門だけでなく環境部門やCSR部門などの連携が必要で、ボトムアップでの意思決定が難しいのが事実です。今後、現場でのボトムアップの検討や提案が増えれば、発行数も拡大すると思います。

 また現状、投資家は、「利回りが低くてもグリーンボンドを買いたい」という状況には至っていません。拡大のためには、投資家に対してアピール以外のメリットを打ち出す必要があるでしょう。

参加者:グリーンボンドを発行した企業から、どのような感想を聞きますか。

清水:これまで関係があった投資家ではない「新しい投資家とつながりができた」という感想が多いです。投資表明では、投資家の名前がはっきりと示されるので、企業と投資家の関係性が強くなったと感じている企業も多いようです。

参加者:企業のESGの取り組みを審査する評価機関は、どのように選べばよいのでしょうか。

清水:格付けを得意とする機関や、事業評価やコンサルティングを得意とする機関など、評価機関によって得意分野があります。海外の評価機関は、グローバルな基準で企業を評価するのも特徴です。評価に当たってどのような点に重きを置くのかといったことも、評価機関や評価する人によって異なります。評価機関を決める際は、慎重に意見交換すべきです。