トップダウンで突き抜ける

青井 リーダーシップについて伺いたいのですが、澤田社長はESGを進めていくときにはボトムアップも必要だけど、それ以上にトップダウンが必要だとおっしゃっています。

澤田 リーダーシップにはいろいろありますが、ESGをやり遂げるにもいくつかのポイントがあると思います。ESGというとだいたいやれるところからやります。いいことですけど、それ以上にはなかなか踏み込めません。しかし、現状ではやりにくい、あるいはできないことも、技術の進歩によってできるはずです。「こういうふうにすればできるのではないか」とトップダウンで実例を示すことが大切だと思うのです。

 こういう問題は、一歩一歩積み上げても、先ほどお話しした延長線上にしか進みません。突き抜けないと駄目です。ボトムアップで突き抜けるのは相当に難しいです。特に日本では。なぜかというと日本人は極端を嫌うからです。例えば5段階評価で成績をつけるのにも、3か4しかつけません。2をつけるのが精いっぱいです。

 ボトムアップで突き抜けることを目指しても絶対にアイデアは出てきません。トップが、突き抜けるとはこういうことだと、失敗してでも見せるしかないと思うのです。

青井 すごく分かりやすい話で、心に染みます。澤田社長がこれまで築いてこられたESGをリードしていく企業文化を未来に向けて受け継ぎ、さらに進化させていくためには何が必要でしょうか。

 私もトップのリーダーシップ、トップダウンがESGに極めて重要だということに大変共感します。では自分がいなくなったらどうするのだろうと考えるのですね。不遜な考え方かもしれないですが、丸井グループは私が3代目でかれこれ15年社長をやっています。2005年に社長になった時に、20年くらいはやるつもりで始めました。よく言われるのですが、オーナー系の会社はトップダウンがやりやすい。その良い面は、例えばESGのように世界と連動したり、ミレニアル世代の期待に応えたりするような将来に向けた投資を実行しやすいことだと思います。問題は後継者選びです。突き抜けられる人をどのように選べばよいでしょうか。

プラスチックの使用削減に取り組む花王の代表的な商品。左はボトルをなくして詰め替え用パックをそのまま使用できるようにしたスマートホルダー。右は従来のボトルに比べプラスチックの使用量を半減させたエアインフィルムボトル。この商品は2020年4月にまず米国で売り出す<br><span class="fontSizeS">(写真:花王)</span>
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プラスチックの使用削減に取り組む花王の代表的な商品。左はボトルをなくして詰め替え用パックをそのまま使用できるようにしたスマートホルダー。右は従来のボトルに比べプラスチックの使用量を半減させたエアインフィルムボトル。この商品は2020年4月にまず米国で売り出す<br><span class="fontSizeS">(写真:花王)</span>
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プラスチックの使用削減に取り組む花王の代表的な商品。左はボトルをなくして詰め替え用パックをそのまま使用できるようにしたスマートホルダー。右は従来のボトルに比べプラスチックの使用量を半減させたエアインフィルムボトル。この商品は2020年4月にまず米国で売り出す
(写真:花王)

賞与を「企業価値連動」に

澤田 やはり仕組みを入れておくことが欠かせないです。自分ももちろんどこかでバトンタッチをします。次の人も自分の意志を継いで、さらに高いレベルで取り組んでくれる、新しい技術をどんどん取り入れてくれる人を選びたいと思っています。けれども、そうなるかどうか分からない。そうしたときにどうするか。ボトムアップにつなげていかないといけません。トップダウンのまま終わらせると、極端に言うと混乱したまま終わる場合もあります。突き抜けることをトップが見本を示すけれども、最後はきちんと落ち着かせないといけない。

 ボトムアップまで持っていければ、トップが暴れようと押さえてくれますね。トップダウンからボトムアップに落とすことができれば、本当に落ち着いて進めると思います。

 そのための策はいろいろあります。一番に考えているのは、人事考課の業績連動部分にESGを思いきり反映させることです。今、われわれの業績連動は、米国のシンクタンクが毎年選定している「World's Most Ethical Companies」に選ばれるかどうかを役員の評価の一部に入れています。これは自分の案なのですが、今後は業績連動を企業価値連動にしたい。要するに売り上げや利益だけでなく、業績をもっと広い意味で捉えて賞与体系を構築したいと考えています。極端に言ったら、会社業績の半分くらいをESGに連動させる。個人業績への落とし込みもESG項目を相当入れたいですね。

 例えばボランティアに行った人には加点した方がいいでしょうし、商品価値の中にESGを盛り込んで開発できた人に加算していく。これまでは予算達成や売り上げ、利益だけでしたが、ESG連動を会社業績や個人業績に加えると仕事のやり方が変わると思うのです。トップダウンで進めてきたESGが自分たちの仕事としてやらないといけないと落とし込めた段階になれば、今後もしっかり続くと思いますね。

青井 仕組みづくりですね。

澤田 既に社外取締役を中心とした報酬諮問委員会に投げています。2019年末に提案したら、「ええっ?」という反応でした。

青井 当社では役員、管理職までESG連動をスタートしたのですが、全社員が対象ですか。

澤田 そうです。

青井 何年くらいでその仕組みをつくるのですか。

澤田 2025年までの中期経営計画「K25」のスタートには取り入れたいです。ESG連動が50%になるのか、30%になるのか、20%になるのか分かりませんが、できるだけウエートを高くしたいですね。取締役会にはそう投げかけています。

青井 素晴らしいですね、本当に。