高木 邦子

TCFD、SASB、GRI、CDPなどESG情報開示の“基準”は様々だ。企業はどのように開示に取り組めばいいか、最新動向を解説してもらった。

 日経ESG経営フォーラムは2020年2月13日、3人のアドバイザリーボード・メンバーを講師に招き、「ESG投資とサステナブル情報開示」をテーマに研究会を開催した。ここでは講演内容をダイジェストでお伝えする。

日本サステナブル投資フォーラム(JSIF) 会長 荒井 勝氏

 日本のサステナブル投資の残高は2017年に136兆円、18年に231兆円、19年に336兆円と大きく伸びています。すべての運用資産に占める比率は56%。欧州は60%を超えていますが日本もかなり追いついてきたという状況です。

PRBが金融のESGを加速

荒井 勝氏
日本サステナブル投資フォーラム 会長(写真:鈴木 愛子)

 06年に国連が策定した責任投資原則(PRI)がESG投資を牽引してきました。2020年2月時点で署名機関の数は世界全体で2926件。中でも年金基金が積極的で、資産残高の世界上位20機関のうち12機関がPRIに署名、年金資産の比率で言うと72%がESG投資です。

 19年秋、PRIに加えて、銀行を対象に責任銀行原則(PRB)がスタートしました。

 PRBは、6つの原則を定め、融資を通してESGに取り組むことを銀行に求めています。例えば、「原則1.整合性」は、SDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定で定められた個人のニーズや社会の目標と、経営戦略との整合性を図ること。また、「原則2.インパクトと目標設定」は、事業が引き起こすポジティブなインパクトを拡大し、ネガティブなインパクトを軽減すること、金融商品やサービスから生じる人や環境へのリスクを管理し、インパクトのある領域については目標を設定して公表することを求めています。

 PRBはPRIに比べて内容が具体的で、銀行だけでなく、一般の企業にも当てはまる原則だと思います。投資家もPRIの補助原則としてPRBを捉えるといいでしょう。

■ 日本のサステナブル投資残高は336兆円に
2019年は前年比45%増の336兆円になった。特に債券とプライベートエクイティに大きな伸びが見られた
(出所:日本サステナブル投資フォーラム (JSIF))

「定義」と「基準」を明確化

 さて今日一番強調しておきたいのが、EUにおけるサステナブル・ファイナンスの情報開示基準の整理・統合化の動きです。

 EUは18年3月に「サステナブル・ファイナンスのためのアクションプラン」を発表しました。現在、技術専門家グループ(TEG)が4つの課題について検討を進めています。

 1つ目は「タクソノミー」。何がグリーンであるかという定義づけを明確にしようという動きです。2つ目は「グリーンボンド基準」で、EUラベルという認証制度を設けようというものです。ラベルのない企業に対して、欧州の機関投資家は投資をしないよう仕向けることが狙いです。

 3つ目は「ベンチマーク」。投資信託に関するEU指令「UCITS」の中でグリーン投資に関するベンチマークを開発し、それに適応していることをファンドに求めるといったことが検討されています。

 最後の4つ目は「気候関連の情報開示に関するガイダンス」です。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、気候変動開示基準委員会(CDSB)、それに米サステナビリティ会計基準審議会(SASB)のそれぞれが提唱する情報開示の基準をどう整合させるかという話です。TCFDが基本的な部分となり、その上にCDSBのフレームワークがあり、さらにその上にSASBの業種別のスタンダードがある。最近はよくこのように説明されています。

 今後はさらに、企業報告の様々なフレームワークとスタンダードの間でも調整が進むでしょう。国際統合報告評議会(IIRC)やCDP、GRI、ISO、CDSB、SASBなどが共同・連携し、対立や不一致、重複を避けるための調整を図っています。

 企業にとって情報開示にどう取り組むかは非常に重要な経営課題ですから、こうした海外の動きに注目していただきたいと思います。