半澤 智

オリンパスが、海外の「物言う投資家」を社外取締役に迎えた。富士通は「投資のプロ」を取締役会議長に据え、投資家へのアピールを強める。

 2019年1月11日、オリンパスが発表した新たな経営方針が、株式市場に大きな衝撃を与えた。海外の投資ファンドから社外取締役を迎えると発表したからだ。

 その投資ファンドは、米バリューアクト・キャピタル。いわゆる「物言う株主」(アクティビスト)で、オリンパス株を約5%保有する大株主でもある。日本企業が自らアクティビストを社外取締役として迎え入れるのは、異例中の異例だ。

オリンパスの竹内康雄社長(写真:北山 宏一)

 オリンパスの狙いは何か。竹内康雄社長は、「取締役会には多様性が欠かせない。バリューアクトが株主として入ってきて、株主の視点が重要だと思った」と語る。

 バリューアクトによるオリンパスへの投資が明らかになったのは18年5月末。バリューアクトと対話を続けていく なかで、オリンパスに社外取締役を派遣したいという申し出を受けた。

 バリューアクトは、存在こそ広く知られていたが、その働きは黒子に徹し、これまでメディアへの露出も避けてきた。今回、オリンパスの社外取締役に就任したデイビッド・ロバート・ヘイル氏が、就任の狙いを語った(次ページ囲み記事)。

「上場来高値」を更新

 竹内社長は、「最初はアクティビストが来たと思って抵抗感があった」と打ち明ける。しかし彼らは、増配や自社株買いなどを迫るアクティビストとは行動パターンが違った。ヘルスケア事業や米国でのビジネスの知見が豊富で、株主視点での助言が役に立つと感じたという。何より竹内社長は、短期的な利益ではなく長期的な視点で企業価値向上を目指すという姿勢で一致していると感じていた。

 同社はかつて、1990年代の財テク失敗で抱えた含み損を簿外に隠ぺい。損失隠しに代々の経営陣が関与していたことが明らかになるなど、長い間、経営が揺らいでいた。

オリンパスの株価の推移
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 オリンパスの企業変革は、今度こそ本気かもしれない——。投資家は同社の決断を好意的に受け止めた。発表前に800円台だった株価は1200円弱まで上がり、19年5月には上場来高値を更新。その勢いはさらに増している(19年10月28日現在)。

 グローバル競争に勝つためには、社長を戒め、正しく導く「社外の目」が欠かせない。そこで、企業変革プランの一環として宣言していた指名委員会等設置会社への移行を19年6月に実行。15人の取締役のうち10人を社外から招いた。そのうちの1人がヘイル氏である。

 取締役会は、社外取締役の知見に基づく意見が様々に飛び交うこれまでとは異なるものとなった。各分野に精通した取締役が集まるため、自分の専門分野の議論については、譲らないときもあるという。こうしたとき、竹内社長はこのように言う。「社外取締役の役割は執行陣の監督と支援だ。忘れないでほしい」。形だけでなく、業績向上という「結果」につながる取締役会の議論の在り方を模索中だ。

 19年に創業100年を迎える老舗企業の変革を、業績向上につなげることができるのか。ヘイル氏をはじめとする「外部の目」を経営の強みにできるかどうかにかかっている。

 日本ではこの先、バリューアクトのようなアクティビストの存在感が高まっていくだろう。アクティビストを社外取締役に迎え、企業と共に中長期の企業価値向上を進める新しい時代が幕を開けた。