【interview】富士通の株価は倍になってもいい
阿部 敦 氏
産業創成アドバイザリー 代表取締役
富士通 社外取締役 取締役会議長(写真:清水 真帆呂)

 ICT(情報通信技術)の進歩はものすごく速く、富士通はこうした変化の激しい中にいる。世界で勝ち抜くには、過去の慣習にとらわれない「客観の目」と変化の「スピード」が必要となる。社外取締役である私が取締役会議長を務める意義はそこにある。

 海外投資家がよく私に対話を求めてくる。こうした投資家は、ずっと富士通を追っかけてくれており、大切な存在だ。海外投資家からよく言われる要望は3つある。富士通の強みである国内事業のさらなる強化、自己資本比率を下げての戦略的投資の実行、共通費の削減だ。こうした投資家の意見を取締役会で積極的に取り上げ、市場との対話を意識した議論を心がけている。

 富士通は、いまだに市場から「総合電機メーカー」と見られており、ICTを専業とする企業と比べてPER(株価収益率)が低く、株価は割安だ。2019年6月に時田隆仁社長が就任し、新しい経営方針を打ち出した。この考え方を市場にも理解してもらいたい。富士通が何を目指し、どのようなことをやっているのかが市場にきちんと伝われば、株価は今の1.5〜2倍になると思っている。富士通のような大企業が株価を伸ばすことは、年金制度の維持や地域経済の活性化などにもつながり、社会的意義が大きい。

 取締役会議長の大切な役割は、取締役の意見を引き出すことだ。多様な意見を引き出すことを意識している。あらゆる可能性を検討することが、チャンスをつかみ、リスクを減らすことにつながるからだ。米国企業で約10年間、取締役を務めた経験がある。米国企業の取締役会は、CEO(最高経営責任者)以外は全て社外役員というケースが多く、経営に様々な知見を取り入れようとしているところに強みがある。

 執行側と監督側は、適切な緊張関係がなければならない。監督側の質問に対して執行側がただ答えるだけの取締役会は全く意味がない。これが取締役会で陥りがちな「罠」だ。執行側のトップである時田社長には、どんなことをいつまでに実行するのかを強く問う。そして、決めたことがどの程度実現できているのかというモニタリングとフォローも強化している。これができるのが、変化の激しいグローバル市場で勝てる経営者だ。(談)

「日経ESG」(2019年12月号)では、社外取締役を活用して企業価値を高める先進企業の事例などを詳しく紹介しています。