相馬 隆宏

丸井グループは「小売り」と「フィンテック」の2つの事業を柱に成長を続けている。競合他社に真似をされにくい独自のビジネスモデルを構築した。

 丸井グループは2019年3月期決算で、連結営業利益が10期連続の増益、EPS(1株当たり純利益)が28年ぶりに過去最高となった。2020年3月期も増収増益、EPSは過去最高を更新する見込みである。

 同社の事業は「小売り」と「フィンテック」の2つを柱とする。2007年の貸金業法改正や翌2008年のリーマン・ショックのダブルパンチを受けて経営危機に陥った頃から見ると、ビジネスモデルは様変わりしている。一言で表せば、長期視点で見て安定的に収益を得られるビジネスモデルを構築した。

生涯利益を最大化

 小売り事業は、消化仕入れと言われる「百貨店型」から、定期借家(定借)契約に基づいて賃貸収入を得る「ショッピングセンター(SC)型」に切り替えた。店舗の契約形態は、2014年3月期は7割が消化仕入れ、1割が定借だったのが、2019年3月期は8割が定借、2割が消化仕入れとなり逆転している。

 一方のフィンテック事業は、クレジットカードでの家賃の支払いなどによる継続的収入を伸ばしている。同社の「エポスカード」での家賃の支払い額は2019年3月期に2607億円となり、エポスカードの取扱高に占める比率は11%に達した。2013年3月期と比べると支払い額は6倍、取扱高比率は2倍に伸びている。

 2019年3月期は1年間に2億人超が来店し、クレジットカードの新規会員は80万人を突破した。フィンテック事業の営業利益はこの5年間、毎年30億円以上増え続けている。

 丸井グループのビジネスモデルは、テナントや顧客一人ひとりから生涯で得られる利益「LTV(生涯利益)」を拡大する戦略に基づいている。「当社のビジネスモデルは、海外の投資家からSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型と言われる」(同社CFO、IR部長兼財務・投資調査・サステナビリティ・ESG推進担当の加藤浩嗣・常務執行役員)。

 他に類を見ないこのビジネスモデルを理解してもらうべく、2019年度から「リカーリングレベニュー(継続的収入)」を公開し始めた。今や、テナントからの賃貸収入やクレジットカード会員からの家賃保証の収入など、将来見込める収入が売上総利益の6割を占める。

■ 継続的収入を増やし、長期視点の経営を推進
※ 売上総利益+販売管理費戻り(取引先から得る経費)に占める割合を示した
売上総利益に占めるリカーリングレベニュー(継続的収入)の割合は6割を超える。店舗の魅力を高めて集客を増やし、新規のクレジットカード会員を獲得することがリカーリングレベニューを増やす鍵になる(出所:丸井グループ)
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■ テナントとクレジットカード会員から継続的収入
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 野村證券グローバル・リサーチ本部エクイティ・リサーチ部消費チーム・ヘッドマネージング・ディレクターの青木英彦氏は、「リカーリングレベニューが粗利ベースで6割を超えるのは、小売り事業者やクレジットカード事業者からするとあり得ない数字だ。単なる小売りとクレジットカード事業の融合とは違ってきている。非常にユニークな事業・業績特性を持っている」と言う。