聞き手/藤田 香

国連グローバル・コンパクトの発足は企業のビジネスモデルを変えた。これからは脱炭素とカーボンマイナスが企業価値になる時代だと話す。

――国連グローバル・コンパクトの創設に関わり、事務局長を務めました。グローバル・コンパクトはどんな経緯で発足しましたか。

ゲオルグ・ケル氏
国連グローバル・コンパクト 創設メンバー、元事務局長/英アラベスク・グループ会長
ドイツ生まれ。ベルリン工科大学卒。独フラウンホーファー研究機構の研究員、金融機関での金融アナリストを経て、1987年から2015年まで国連の活動に従事。国連グローバル・コンパクトの創設に携わり、国連責任投資原則 (PRI)、国連責任ある経営教育原則(PRME)、持続可能な証券取引所 (SSE) イニシアティブの創設を推進。今秋、『サステナブル投資:新しい地平性への道筋』(仮訳)を刊行予定(写真:中島 正之)

ゲオルグ・ケル 氏(以下、敬称略) 1999年の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で、国連事務総長のコフィー・アナン氏が提唱した企業イニシアティブが国連グローバル・コンパクトです。光栄なことに、私は創設時の声明文を書く栄誉をいただきました。

 当時、持続可能性に関する条約や指針はありましたが、それはあくまでも政府間のもの。企業も持続可能性を実行する機が熟したと私たちは考えました。企業は短期的な利益を追求するだけではなく、グローバルなサプライチェーンに対して責任を果たすべきであると。そこで、「人権」「労働」「環境」「反汚職(ガバナンス)」の4つに注目して原則を定めました。

 この原則に基づき、ビジネスの本流に持続可能性を組み込むことを求めたのです。グローバル・コンパクトの地域ネットワークは現在約70カ国に広がっています。日本にも「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」があり、約350の企業・団体が参加しています。

 グローバル・コンパクトは、企業が環境や社会、ガバナンス(ESG)に責任を持つことを求める考え方であり、国連が支援する他の持続可能性のイニシアティブを発足させる触媒にもなりました。

 例えば、投資判断にESGを組み込むことを促す「責任投資原則(PRI)」、上場企業にESG情報開示を求める「持続可能な証券取引所(SSE)イニシアティブ」。さらに、ビジネススクールなどの学術機関のカリキュラムに持続可能性の観点を組み込む「責任ある経営教育原則(PRME)」。いずれも私が事務局長時代に発足しました。持続可能性を企業活動だけでなく、金融分野にも広げることができました。