構成/藤田 香

2020年7月からレジ袋の有料化が始まった。プラスチック問題に企業はどう対応すればよいか。その解決策を新著『プラスチック革命』で提案した著者と監訳者が語り合った。

枝廣 パウリ氏は、新著『プラスチック「革命」』の中で、海洋プラスチック汚染の調査と問題解決のためのビジネスモデルの開発に取り組んでいることを紹介しています。海洋プラスチック汚染は今、どの程度深刻ですか。

グンター・パウリ 氏
1956年ベルギー生まれ。聖イグナチオ大学経済学部を卒業し、91年に世界で初めてゼロエミッションの考えを取り入れた洗剤工場を建設。94〜97年に国連大学学長顧問としてゼロエミ構想を提唱。その後、海洋を保全しながら経済活動に結び付ける「ブルーエコノミー」を提唱した。ダボス会議で「21世紀のリーダー」の1人に選出された。ゼロエミッション研究構想(ZERI)財団代表。ローマクラブ会員(写真:ゼリ財団提供)

パウリ 正直なところ、どこまでひどい状況か全貌は分かっていません。2016年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、「2050年までに海のプラスチックの重量は魚の重量を超える」という発表がありました。海洋中のマイクロプラスチックは既に魚よりはるかに多いとみられ、状況は劇的に悪化しています。毎分ごみ収集車1台分のプラスチックが海に投棄されています。

 この状況が続けば、地球上の生命が脅かされるでしょう。3次元の体積で考えると海は地球(陸と海)の体積の98%を占め、生命のレジリエンス(回復力)は土壌より海洋の健全性に大きく依存しています。海洋はまた、CO2の大きな吸収源でもあり、海藻、微細藻類、微生物がCO2を深海に大量に貯留する上で非常に重要な役割を果たしています。

 もし海洋中にこのままプラスチックが増え続けるなら、海洋生物はストレスを受け、生命のレジリエンスを失ってしまいます。

太陽や海でも分解を可能に

枝廣 プラスチック汚染の問題では、人々はプラスチックの「量」について懸念していますが、パウリ氏は「質」についても問題提起していますね。市場に出回るプラスチックには、使い勝手を良くするため様々な添加剤が含まれ、毒性が強いものや発がん性物質もある、と。しかし、その多くは企業秘密で情報開示されないため、リサイクルの過程で添加物の除去を困難にしていると指摘しています。添加物が分解されにくいことも問題視しています。

パウリ そうです。機能性に優れたプラスチックは生活を快適にする上でとても役立っていますが、海中で分解されるように設計されていません。生分解性プラスチックは既にありますが、分解されるのは土の中だけ。多くは、太陽の下や海中では分解されません。今後、車やペットボトル、パッケージを設計する際には、土の中、太陽の下、海の中という3つの条件下で分解できるよう、プラスチックのポリマーを設計し直すことが早急に求められます。

枝廣 淳子 氏
環境ジャーナリスト、翻訳家。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程を修了。『不都合な真実2』(アル・ゴア著)の著書翻訳をはじめ、環境・エネルギー問題に関する講演や執筆、CSRコンサルティングや異業種勉強会などを開催。大学院大学至善館教授、イーズ代表取締役・幸せ経済社会研究所所長、チェンジ・エージェント会長。日本学術会議連携会員(イーズ提供)

枝廣 3つの条件下で分解できる生分解性プラスチックはありますか。

パウリ 最近、科学的知見が出てきました。イタリアが先行し、5社の5工場が太陽の下でも海中でも土中でも分解するプラスチックを製造しています。ただ、その市場はわずか0.1%。99.9%のプラスチックが3つの条件下では分解されません。

枝廣 日本でプラスチック問題について話すと、「日本にはごみ収集システムがあり、焼却炉も整っている」と多くの人が言います。「プラスチックごみが海に流出しないから、使い捨てプラスチックを使い続けてもいいじゃないか」と。こうした意見にはどう答えますか。

パウリ それは非常に妥当な反応です。「プラスチックを使用後、ちゃんと処理しているのだから害を及ぼしていない」と。でも、それは正しい答えではありません。

 プラスチックは、「油」と「糖」の2つの天然成分から成り立ちます。天然成分であるなら、生命の循環という点において焼却せず土に還すべきです。すべて分解し、土壌に養分を補給し続けるべきです。