小槌 健太郎/ジャーナリスト

新型コロナウイルスの感染防止の厳戒体制の下、異例の「仮想」総会が相次いだ。ESGの提案が増えた一方で、企業統治や株主権利の強化を求める声も目立った

 4月から6月にかけてピークを迎える米国の年次株主総会。2020年は異例の展開となった。新年早々、中国で新型コロナウイルス感染症の患者が増え始め、1月下旬の春節をきっかけに感染が爆発的に広がり始めると、米国でもその影響を懸念する声が出始めた。

雪崩を打って「仮想」総会

 それでも米国企業の株主にとって、極東で広がる感染症はまだ対岸の火事程度の認識だったようだ。コンピューター大手のアップルは20年2月17日に投資家に宛てた書簡で、新型コロナウイルスの影響により1〜3月期の売上高見通しを達成できない見込みとしたが、2月26日の株主総会では堅調だった19年決算の話に終始し、ティム・クック最高経営責任者(CEO)は、新型コロナウイルスは同社にとって「難題」とコメントするにとどまった。

 だが、感染者がまだ一人も出ていなかったサンフランシスコ市が2月25日に非常事態宣言を発令したのを皮切りに、各州が相次いで非常事態を宣言。3月13日に米証券取引委員会(SEC)がインターネットでの「仮想」株主総会に関する指針を出し、ついには同日、連邦政府が国家非常事態を宣言するに至って一気に流れが変わる。

 大手コーヒーチェーンのスターバックスは3月18日の株主総会を急きょ通常の集会から「仮想」総会に切り替えた。オンライン配信に加えて、提案の賛否も電子投票で行った。以前からオンライン総会を実施していた半導体最大手のインテルやコンピューター大手のヒューレット・パッカード、SNS大手のツイッターのようなIT企業にとどまらず、ほとんどの主要企業が仮想株主総会に切り替えた。

株主総会を「仮想」総会に切り替えたスターバックス。議案の賛否も電子投票で行った。上は、同社のケビン・ジョンソン最高経営責任者(CEO)
(写真:スターバックス年次株主総会のストリーム配信)

 ネブラスカ州オマハに毎年4万人以上を集めてピクニックやカクテルパーティーなどのイベントを組み合わせた株主総会を開催する著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイも、5月2日の株主総会はライブ配信に限定して従来のような集会は中止した。ただ、バフェット氏は困難な時期であることは認めながらも、米国が過去多くの危機を乗り越えて成長を続けてきたことに触れ、「どんな出来事も米国の成長を止めることはない」と、引き続き米国企業へ投資するよう株主に訴えた。