情報開示迫られたアップル

 例えば、アップルに対して、中国政府のインターネット検閲への協力実態を開示するよう求めた提案は40.6%と高い賛成票を得た。提案した消費者団体サム・オブ・アスは、アップルが中国政府の要請に応じて同社のストアから多数のVPN(仮想私設網)やニューヨーク・タイムズ紙のアプリなどを削除し、消費者の表現の自由や情報にアクセスする権利を侵害していると主張。取締役会に対して報告を求めた。

アップルが20年2月26日に開催した株主総会では、中国政府に対するインターネット検閲への協力実態を開示するよう求めた提案が出され、40.6%と高い賛成票を得た。上は、同社のティム・クック最高経営責任者(CEO)<br><span class="fontSizeS">(写真:AP/アフロ)</span>
アップルが20年2月26日に開催した株主総会では、中国政府に対するインターネット検閲への協力実態を開示するよう求めた提案が出され、40.6%と高い賛成票を得た。上は、同社のティム・クック最高経営責任者(CEO)
(写真:AP/アフロ)

 16年と18年にも同様の提案が出たが、賛成票は10%に満たなかった。だが、19年は香港で中国政府に対する抗議デモが続き、参加者が利用していた地図アプリがアップルのストアから削除されたことが報じられたこともあり、この提案が支持を集めた。今後アップルは、中国などで政府との関係をどう構築していくか、株主の視点を意識する必要に迫られるかもしれない。

 他にも米国で社会問題となっている処方鎮痛剤などに含まれる麻薬性鎮痛薬「オピオイド」の中毒蔓延に絡み、19年にオクラホマ州地方裁判所から5億7200万ドルの制裁金を課せられたジョンソン・エンド・ジョンソンは、株主提案でオピオイドに関するリスク評価を行い報告するよう求められた。同社の取締役会は訴訟や関連するリスク情報は開示済みとして反対票を投じるよう求めたが、提案は60.9%で可決された。もう1つの株主提案でもオピオイド訴訟に触れ、会長職を取締役会とCEOから独立させて、株主の権利を守るよう求めた。

強まるレジ袋廃止の声

 また、ウォルマートでは、使い捨てレジ袋の使用が海洋汚染や動物の誤食による環境破壊につながっているとして、株主が将来的なコストとリスクの報告を求めた。同社は25年までにプラスチック容器の削減やリサイクル可能なバッグへの移行を表明しているが、株主はより明確に使い捨てレジ袋の廃止に向けた移行プランと目標の提示を求めている。

 ESG経営は企業活動を評価する上で、株主にとっても重要な視点になりつつある。一方で、新型コロナウイルス感染症の拡大により世界情勢や企業経営が激変するなか、21年には緊急避難的に実施された「仮想」総会の是非を問う声や、今までとは全く異なる視点の株主提案が増える可能性もある。