相馬 隆宏

企業はもはや、環境や社会課題の解決と事業との一体化を避けて通れない。国際社会や投資家、顧客が要請するESG経営が新たな成長エンジンになる。

 花王の澤田道隆社長は2018年2月、決算説明会の場で中期経営計画の達成に向けてESG(環境・社会・ガバナンス)活動を本格化すると宣言した。同社は、2017年12月期の営業利益が5期連続で最高益を更新するなど業績は好調だ。そうした中、さらなる成長へ向けたエンジンとしてESG活動を位置付けた。

10年でリスク認識が一変

 花王の宣言に象徴されるように、ESGを経営戦略の中枢に据える企業が増えている。

 ESGの一角を占める環境は、世界の経営者の間では最も重大なリスクとして常識になっている。それを端的に表しているのが、毎年1月のダボス会議で発表される「グローバルリスク報告書」だ。「異常気象」「自然災害」「気候変動対策の失敗」「水危機」。2018年の報告書で重大リスクに挙がった上位5つのうち環境に関するものが4つも入っている。経済に関するリスクが目立っていた10年前とは様変わりしている。

■ 世界が認識する重大リスクは「経済」から「環境」に移っている
世界経済フォーラムは毎年1月に「グローバルリスク報告書」を発表している。影響の大きいリスクの上位を、2010年頃までは経済や金融リスクが占めていたが、最近は環境や社会リスクに変わっている
出所:『グローバルリスク報告書 2018年度版』(世界経済フォーラム)
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 2015年、国連が「SDGs(持続可能な開発目標)」と「パリ協定」を採択したことで、世界の経営者が環境や社会課題の重要性を再認識したのは間違いないだろう。ロイドレジスタージャパンの冨田秀実取締役は、「パリ協定やSDGsは世界のコンセンサスになっている。気候変動が本当なのかどうかを疑う人もいるが、世界の流れに乗らないとビジネスは成功しない」と話す。

 前述の花王は2016年にサステナビリティ推進部を新設し、それまで別々の組織だった環境とCSR部門を統合している。それから2年間、ESG活動の本格化を含めた将来の成長戦略を練ってきた。その表れが今回の中計だ。

 TOTOでも変化が起きている。同社経営企画本部ESG推進部の青野拓部長は、「事業とCSRの一体化が進み、経営層の関与が深まっている。ESG評価機関やSDGsの動向など経営層に把握、判断してもらいたい案件が増えており、(喜多村円)社長とも月に1〜2回は話をしている」と言う。

国連は2015年9月、SDGs(持続可能な開発目標)を採択した
写真:UN Photo/Cia pak