ESG求める「外圧」強まる

 英蘭ユニリーバやスイスのネスレといったグローバル企業はパリ協定やSDGsが登場する前から、環境や社会課題の解決と事業の成長の両立を標榜し、実績を残してきた。こうした企業に比べると、ESGに本気で取り組もうという姿勢が今ひとつ見えなかった日本企業を変えつつあるのが、「外圧」の存在だろう。

 ESGの取り組みを投資の判断材料にするESG投資の広がりはその一つだ。日本でも世界最大級の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2017年からESG投資を開始した。投資家が企業の環境や社会課題への対応力を評価するようになっており、不十分な場合は長期成長を支える安定株主の確保にも影響を及ぼす可能性がある。

 CO2排出量の削減や女性管理職の登用といったESGに関わる非財務情報の開示に対する圧力も大きくなっている。インデックス(株価指数)を作成するESGの評価機関は公開情報を基に企業を格付けするところが多いからだ。いくら取り組みが進んでいても、それを開示しなければ正当な評価は得られない。

 2017年6月には、米金融安定理事会(FSB)の気候関連の財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)が、気候変動による財務リスクを開示する方法を盛り込んだ提言を発表した。ロンドンに本拠を置く国際NGOのCDPが2018年から、TCFDの提言を企業の評価に取り入れている。CDPは毎年、世界の約6000社に質問書を送り、気候変動、水資源、森林資源に関する取り組みを調査・採点、公開している。CDPの活動には、運用資産総額100兆ドル、800超の機関投資家が関わっており、グローバル企業を中心に無視できない存在になっている。

 「日本企業は他をキャッチアップするのは得意だが、自ら変わるのは苦手で外圧でしか変われないと言われる」(日本総合研究所創発戦略センター/ESGリサーチセンターの足達英一郎理事)が、外圧を利用して世界の潮流に乗ればメリットも得られる。

 メリットは大きく3つある。

 まず、新規事業の創出だ。例えば、2030年の目標を定めたSDGsに貢献することは、新たなビジネスチャンスにつながる可能性がある。SDGsは、環境や健康、人権などの課題を17の目標と169のターゲットで示している。途上国、先進国を問わず、これらの課題を解決する製品やサービスのニーズは高い。

 次に、非財務情報を積極的に開示することによって、投資家や取引先、顧客など社外からの評価を高められるだろう。GPIFが採用するESGインデックスや、世界的に有名なダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)の構成銘柄に組み込まれたり、CDPで高い評価を得たりすれば、投資を呼び込みやすくなる上、信頼のおける企業として取引の拡大も期待できる。

 最後は、人材の確保だ。短期視点で利益を追求するだけでなく、環境に配慮し、社会の要請にきちんと応える「良い会社」であることは、優秀な人材を呼び込む上で重要になる。実際、途上国を中心に水や衛生、食料問題の解決に取り組むユニリーバは、世界34カ国で大学生が「働きたい会社」の1位になっている。

■ 持続的成長に貢献する環境・CSR部 3つの要件
ESGの取り組みを推進することで、新規事業の創出や社外評価の向上、良い人材の確保という3つのメリットが期待できる。持続的成長に欠かせないこれらのメリットを得られるかどうかは、環境・CSR部の働きが鍵を握っている

 日本は人口の減少により、人手不足の問題がますます大きくなることが予想される。仕事にやりがいや誇りを持てるかどうかは、人材の確保、引いては持続的成長に大きく影響するだろう。2017年、創業100周年を迎えたTOTOの喜多村円社長は言う。「当社の社員は皆誇りを持っている。周りからもよく言われる」。

 「人生100年時代」とも言われ平均寿命を延ばしている人間のごとく、会社の寿命を延ばせるかどうかはESG経営が鍵を握るといっても過言ではない。特に、環境(E)と社会(S)の課題解決を担ってきた環境・CSR部が果たす役割は大きい。環境法規制の順守、省エネや廃棄物削減といった「守り」の組織から、企業の価値を高める「攻め」の組織への変革が求められている。

「社長を外の風に当てよ」、「ハイブリッド型組織に変革を」>>