毛皮、フカヒレ使わない

 この他、欧州を中心に、家畜に対しても一定の飼育環境を与えるべきという動物福祉の概念が広がりを見せている。

 例えば、狭いケージに閉じ込められた鶏が産む卵を販売する流通業者やそれを使用する食品業者が問題視されるようになってきた。

 アパレル業界では、商品に使用する羊毛や羽毛を提供してくれる動物たちに苦痛を与えない生産方法への転換が進み始めている。イタリアのグッチやジョルジオ・アルマーニなどの高級ブランドは、既に毛皮を用いた商品の販売を停止した。

 高級食材として知られるフカヒレにも影響が及ぶ。サメ(フカ)のヒレを切り落とし、食用に必要ない胴体をそのまま海に投げ捨てるという漁法が残忍とされ、動物保護団体から非難を浴びている。その結果、「ザ・ペニンシュラ」や「マンダリンオリエンタル」といった外資系高級ホテルチェーンが、フカヒレ料理の提供をやめるという事態にまで発展している。

 これまで見てきたように、サプライチェーンの問題事例は枚挙にいとまがない。問題が幅広いだけではなく、対象となる産業分野は多岐にわたる(下の表)。実際のところ、どの企業にとっても、サプライチェーンのあらゆる問題とは完全に無関係であると言い切るのはかなり困難と言わざるを得ない。

■ 調達に関わる主なリスク
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 企業にとってさらに厄介なのは、問題がそれぞれ独立しておらず、複合的に絡み合っていることである。例えば、アパレルの染色工場では従業員の健康被害と地域の環境汚染などいくつものリスクに対応しなければならない。紙やパーム油などの調達に伴う森林の伐採では、森林資源の枯渇や地球温暖化といった環境問題だけでなく、労働者や地域住民の人権侵害が同時に発生する可能性がある。

 こうした話を聞いて経営者は頭を痛めているかもしれない。ただ、調達に関わる問題は過去20年にわたって、メディアやNGOから継続的に指摘され続けていた。それでは、なぜ今、この問題が改めてクローズアップされ、企業が対応を迫られているのか。後編は、その背景について解説する。