相馬 隆宏

「働き方改革」で競争力の強化を狙う企業が増えている。多様な人材が能力を発揮できる職場づくりにトップのコミットメントが不可欠だ。

 2019年4月、「働き方改革関連法」が施行され、残業時間の上限規制が導入される。繁忙期やトラブル対応など特別な事情があった場合でも、月100時間以上残業をさせた企業は罰則が科される。

半数の事業場で違法残業

■ 半数の事業場で違法な時間外労働
出所:厚生労働省

 労働問題に詳しい西村あさひ法律事務所の菅野百合パートナー弁護士は、「労働に関わるコンプライアンスに対する社会の目が厳しくなっており、レピュテーション(評判)リスクが大きくなっている。過重労働や過労死など不祥事が発覚すれば、社員を採りづらくなったり、客離れを引き起こしたり、その影響は計り知れない」と話す。

 厚生労働省によると、長時間労働の疑いのある事業場のうち違法な残業をさせていた事業場は約半数(2017年度)に上る。運輸交通業や接客娯楽業、製造業では、7割超の事業場で法令違反が見つかった。

■ 「運輸交通業」「接客娯楽業」「製造業」で法令違反が多い
出所:厚生労働省

 いまだ多くの企業で長時間労働が散見され、世界から見ると日本の生産性は低いといわれる。日本生産性本部によると、2016年の日本の「時間当たり労働生産性」は46ドルで、OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中20位。G7(主要7カ国)では最下位の状態が続く。

 法規制対応はもちろん、レピュテーションリスクの回避へ、より効率的に働く組織への変革は待ったなしだ。労働力人口が減少する中、「働き方改革」を加速させ、生産性を高めなければ、競争力を維持できなくなるのは明らかだ。社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できるよう、勤務形態の見直しや仕事と家庭との両立支援が重要になっている。

 企業のESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを評価する機関投資家も、競争力の根幹となる「人的資本」に大きな関心を寄せる。働き方改革は、投資家の評価にも影響を及ぼす。

 運用会社の野村アセットマネジメントは、ESGの取り組みを約60項目で評価する手法を開発中だ。評価項目の中には、「労使環境」や「女性」といった人材に関するものもあり、労働時間や両立支援策などをチェックしている。「ESGのうちSは範囲が広く、評価が難しいが、人的資本は絶対に外せない重要なポイントだ」(野村アセットマネジメント責任投資調査部シニアESGスペシャリストの宮尾隆氏)。