利益出す組織は社会性も高い

 私が社長に就任した2007年以降、三菱ケミカルホールディングスグループは「Sustainability(環境・資源)」「Health(健康)」「Comfort(快適)」の3つを判断基準にすえて企業活動を行っています。20年後、30年後の地球の姿を想定し、そこからバックキャストして化学産業として何をすべきかを考えた結果です。経営資源の有効活用のため、判断基準を満たさない企業活動は行っていません。

■ 企業活動の判断基準化(2007〜)
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 実際に次世代事業として取り組んだのは炭素繊維・複合材料、有機太陽電池、有機EL、植物由来ポリマー、リチウムイオン電池材料、アグリビジネス、ヘルスケアソリューションなど。二酸化炭素(CO2)を原料にして化学品を生み出すことにも挑戦しています。地球温暖化の悪者となっているCO2を還元して“循環炭素化学”を構築するというのは極めてチャレンジング。ロマンを持ってMOSに寄与したいと思っています。

 MOSの価値を定量化することにもこだわってきました。Sustainability、Health、Comfortの領域での取り組みを「環境負荷の削減」「健康に貢献する製品・サービスの提供」「ステークホルダー満足度の向上」など23にまとめ、それぞれ評価項目と目標数値を設定し、達成度を点数化して進捗を可視化しています。定期的に指標の中身や重みづけを見直し、経営の意思を反映しています。

 これらの指標は、三菱ケミカルホールディングスが事業会社を業績評価する際にも活用しています。そこからわかるのは、MOEとMOSの間には正の相関が見られること。つまり、社会性が高い事業は利益もしっかり出しているのです。

 私が代表幹事を務める経済同友会では、国家価値も3軸で解析しようと議論を進めています。X軸は国民総生産(GDP)の改善・拡大など「経済の豊かさの実現」、Y軸は情報・医療・環境技術など「イノベーションによる未来の開拓」、Z軸は人口・労働、教育、社会保障、財政、そして環境・エネルギーなど「社会の持続可能性確保」。3つを総合したものが国家価値だと考えています。

 3つの軸の最適化を図る上でカギを握るのはZ軸です。社会の持続可能性の大前提はガバナンス。日本ではコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、統合報告書など形は出来ているものの、不祥事が絶えません。実効性を付与したガバナンスを整えることが必要です。

 世界は今、グローバル化、デジタル化、ソーシャル化という変革の波に直面しています。戦後70年を超え、日本は新しい経済・社会システムを構築していくことが求められます。

 戦後100年に当たる2045年ごろには、人工知能(AI)が人類の知能を超えるシンギュラリティー(技術的特異点)に到達するといわれています。持続可能な社会の姿を念頭に置き、バックキャストすることで今、何をすべきかを考え、行動していかなくてはなりません。新たな日本、「Japan 2.0」の始動に向け、2020年までの準備期間が重要だと考えています。

三菱ケミカルホールディングス会長 経済同友会代表幹事 小林 喜光 氏
写真/鈴木愛子