市民社会・NGO

 企業に対する情報開示のプレッシャーと同期して、開示情報を有効に活用し、さらなる取り組みを促す手法も広がりつつある。NGOなどによる企業のランキングや評価リポートがそれだ。

 例えば、ノウザチェーン(サプライチェーンを知る)というプロジェクトがある。「ICT(情報通信技術)」「食品と飲料」「アパレルと靴」の事業セクターから大手グローバル企業20社を選び、サプライチェーンのCSRの取り組みを評価、ランキングした結果を公開している。

■ ノウザチェーンの企業ランキング
出所:KnowTheChain「Apparel & Footwear Benchmark Findings Report」を基に作成

 経営者のコミットメント、トレーサビリティとリスク評価、購買慣行、サプライヤーのモニタリング(監査等)など7つの項目で評価する。日本企業では、日立製作所やキヤノン、ファーストリテイリングなどが評価対象になっている。

 紛争鉱物については、イナフ・プロジェクトが継続的に報告書を発行しており、紛争鉱物を使用しているエレクトロニクスや宝飾品関連の企業をランキングしている。紛争鉱物の調達におけるデューデリジェンスの実施とその情報開示状況や、DRCからの紛争鉱物の調達状況、DRCの地域コミュニティに対する支援状況、さらにはドッド・フランク法への支持表明といった項目が評価対象になっている。

■ イナフ・プロジェクトの企業ランキング
出所:The Enough Project「2017 Conflict Minerals Company Rankings」を基に作成

 こうした評価は、企業の開示情報に基づいているため、取り組みが進んでいる企業も情報をきちんと開示しなければ過小評価され、企業イメージの低下を招く恐れがある。

 特に注意しなければならないのは、世界的に名前が広く知られている大企業である。調査にかかる資金や人材などのリソースの制約から、NGOが評価対象にするのは大手グローバル企業のみだからだ。取り組みが遅れているからといって中小企業を選ぶわけではない。

 大手グローバル企業を対象にするのは、大きな改善効果が見込めるためと考えられる。こうした企業は自社のブランドイメージに敏感である場合が多く、業界のリーダーとしての取り組みを促しやすい上、サプライチェーンの範囲も広く影響力が大きいからだ。

 その点からすると、日本企業がこうした評価の対象となることは、一部の著名なグローバル企業を除き、必ずしも多くはない。日本ではこうした評価を実施できる有力なNGOがほとんどいないのも、対象になりにくい理由の一つである。欧米の企業と比較して日本企業はNGOから批判を受けにくい一方、社会の要請を反映したこうしたトレンドから乗り遅れる懸念もある。