将来のリスクと機会を考える

足達英一郎・村上芽・橋爪麻紀子著、日経BP社刊
企業担当者、金融市場関係者向けに注目のSDGsをビジネスの視点で解説、15の産業グループ別にSDGsのリスクと機会を分析した。

 紐付け作業の前に、SDGsに取り組まないリスクと潜在する機会を自社が所属する業種の視点で理解することも重要だ。拙著『ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書』(共著)では、SDGsがカバーする地球規模の課題を俯瞰し、各産業セクターに関連する長期的視野でのリスクやビジネス創出の機会を抽出した。

 本稿では、エネルギー産業に焦点を当て、デンマークの電力会社、エルステッドの取り組みを例にSDGsを巡るリスクと機会の考え方について紹介したい。まずリスクの側面から見ていこう。

 1つ目は、資産が回収不能になる「座礁資産化」を避けるためのダイベストメント(投資撤退)の対象になるリスクだ。欧州を中心とした機関投資家の間では、パリ協定の2度目標達成に向けた規制強化や市場の変化により石炭に代表される化石燃料関連資産が座礁資産化すると捉える見方が広がっている。そのため、関連資産からのダイベストメントが加速している。

 2015年末にはダイベストメントを決定した団体は世界約500団体、総額約400兆円にのぼった。資産規模100兆円以上のノルウェー政府年金基金グローバルも関連株式からの投資撤退を決定した団体の1つだ。売却対象には国内の電力会社も含まれていた。

 日本でも2017年7月、自然エネルギー財団が、国内の石炭火力発電所の設備利用率は現在の80%から今後大きく低下し、2026年度には56%程度まで下がる可能性があると試算し、座礁資産化の観点から石炭火力新増設のリスクを指摘している。

 2つ目に、環境・気候変動リスクによる信用格付の悪化が考えられる。信用格付大手S&Pグローバル・レーティングは、2017年11月、環境・気候変動リスクが信用格付に及ぼす影響を公表した。2015年7月から2017年8月までに同社が実施した約9000件の信用格付のうち、環境・気候変動リスクが用いられた評価は717件。そのうち106件は、格下げや格上げに大きく影響した。その多くが石油、ガス、電力の業種だったという。気候変動がもたらす異常気象への十分な適応対策が施されない限り、大規模プラントの所有がリスクとして捉えられ、信用格付に影響するようになっている。

 そして3つ目のリスクとして、発電所建設における人権配慮への要請の高まりが挙げられる。国際NGOのビジネス・人権資料センターは2017年4月、再エネ関連事業への投資における人権配慮に関する提言をまとめた報告書を発表した。その中で、再エネ発電所の建設事業は環境面での効果が期待される一方、火力や原子力と同様に土地収用、先住民の退去、人権侵害のリスクがあることに対し投資家側の理解が薄いと指摘している。同報告書には、人権侵害を犯すことによる操業コストの増加、反対運動による事業の遅延、資金調達の難航など、過去事例に基づく様々な人権リスクが具体的に例示されている。

■ SDGsに取り組まない場合のリスク(エネルギー産業)