ビジネス機会をどう捉えるか

 現在、同社の主力電源は洋上風力発電だが、ここ数年の技術進展により建設コストは5年間で約6割低下し、発電コストも下がっているため、利益は増加傾向にある。2017年10月に英国で行われた3カ所の洋上風力発電所の入札で同社が1カ所を落札したが、英政府が計画中の原子力発電所の電気料金を下回る発電コストだったと発表されている。同社が風力・バイオマスにかじを切ったことは長期的に見れば適切な判断であったといえる。

■ 欧州市場における発電所の建設コスト
出所:エルステッドの2017年版のサステナビリティ報告書を基に筆者作成

 その他にも様々な波及効果がある。デンマーク風力発電メーカーであるヴェスタスは60カ国以上で事業を展開し、世界1位のシェアを誇る。エルステッドは、こうしたサプライヤーと連携しタービンの発電効率を向上させる取り組みを進めており、地場産業の活性化に貢献している。

 さらに再エネに関心ある需要家にとっても欠かせない存在になりつつある。デンマーク飲料大手カールスバーグは2017年11月に同社のスウェーデンの醸造所で、エルステッドから認証付きバイオガスを購入し、事業運営に必要なエネルギーの100%をバイオマス由来エネルギーで調達した。自社だけの取り組みではなく、サプライヤーや顧客とのパートナーシップこそまさにSDGsが目指すべき姿といえる。

強いリーダーシップが必要

 エルステッドの方針転換は、様々な点で高い評価を得ているが、その1つに経営層の強いリーダーシップが挙げられる。約10年前、「40年にわたりCO2を大量に排出する石炭火力発電所より、2機の洋上風力発電に投資すべきではないか」と議論したことが始まりだったという。

 こうした経営姿勢が市場でも高く評価され、2017年11月に発行した7.5億ユーロ(約975億円)のグリーンボンド(資金使途を環境対策に限定した債券)と、5億ユーロ(約650億円)のグリーンハイブリッドボンド(株式と債券の両面を持つグリーンボンド)は多くの投資家の関心を集めた。資金使途はいずれも同社が進める再エネ事業への投資だ。

 第3者評価機関からもSDGs達成に貢献していると高い評価を得ている。世界銀行にも採用されている独Solactive 社が運用する株価指数、「Solactive SDG World Index」の構成銘柄としてエルステッド株は上位10位以内に位置している(2018年3月時点)。

 エネルギー産業の中で先んじて脱化石燃料の方針を打ち出し、再エネ電力会社としてのブランドを再構築するには、経営層のリーダーシップが欠かせない。

 短期的に見れば業績を悪化させかねないリスクを伴う経営判断だったが、長期的に潜在するリスクを回避し、SDG達成に貢献し得るビジネス機会をつかみ、投資家からの高い評価を得た好事例であろう。