日本への投資に歯がゆさ

――日本企業に対してはどの程度の投資をしていますか。

ライス 日本企業の株式に100億ドル(1兆1000億円)を投資しています。インデックスを使ったパッシブ投資で、広く分散投資しています。

 日本企業を評価する際はガバナンスを中心に見ています。今回来日して分かったのですが、日本企業の多くは主に環境や社会に取り組んでいるようですね。SDGsの注目度も高い。しかし、私たちにとって懸念の一番はガバナンスです。

 企業の株を買うか買わないかはインデックスに従いますが、対話の際はガバナンスに重点を置きます。米国企業は環境に焦点を当てて見ますが、限られたリソースで日本企業を見る場合は環境よりガバナンスを重視します。日本企業の環境や社会面にはそれほど関心がありません。「環境配慮をしなくてよい」と言っているわけではありませんよ。ただ、対話の際に注目するのはガバナンスだということです。

 取締役会の独立性は改善しつつあるか、取締役候補を決める指名委員会の独立性は担保されているか。内部留保が多く、なぜ資金を使わないのか理解が難しいです。最大の懸念は、外国人投資家が投資する際に制約があり、日本人投資家と同じように投資先企業に関与できないことです。株主総会の時期も集中しています。日本は遠い上に言語の問題もあります。他の市場に比べて日本市場に活発に投資できません。もっと投資したいのにできない。フラストレーションを感じますね。

――日本企業とエンゲージメントする専門の担当者はいますか。

ライス 私です。来日するのは今回が10回目。これまでカルスターズ単体で対話の場を持ったことがほとんどなく、複数の投資家の代表団として来日し、団体や複数企業に合同で会って対話してきました。

 最近は日本企業が米国に会いに来る例も増えました。スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードが策定されたおかげでしょう。歓迎すべき変化です。

2018年4月に東京証券取引所で開かれた責任投資の会議「RI Asia」で、ライス氏はGPIFなどとともに機関投資家の立場を話した

――日本では統合報告書が多く発行されています。一方で日本企業は情報開示が下手だとも言われます。そう感じるでしょうか。

ライス 私は米国で統合報告を促進するワーキンググループに入っています。米国では統合報告書を出している企業はさほど多くありません。ですから日本は米国に比べて、統合報告では頑張っている、優れていると言えます。中身も改善してきています。まずは企業に報告してもらい、開示を始めてもらうことが先決です。いったん開示を始めたら、あとは働き掛けによって中身を改善してもらえばよいと考えています。