読む報告書を絞っている

――日本企業の報告書をどの程度読んでいますか。

ライス 少しは見ていますが、詳しく読み込むところまではいっていません。言語の問題ではありません。英語版の報告書を出している日本企業もありますから。ただ、私はカルスターズで多くのESG関係の報告書や論文や研究報告を読まなくてはならず、時間が足りないのです。ですから、読む報告書を選んでいます。今後は読むべき統合報告書も増えるのではないかと思います。

――個人的見解で構いませんが、ESGで評価できる企業や経営者を挙げてください。

ライス 様々な企業を見ているのでどこかだけ挙げるのは難しいですね…。石油・天然ガス企業だと、例えばシェルでしょうか。カーボンフットプリントをライフサイクル全体にわたって評価する方針を打ち出しました。2050年までに実質的にカーボンフットプリントを半減させるという排出量の大幅削減を発表しています。強力なコミットメントですね。他の石油・天然ガス企業もならってほしいと思います。

 アマゾンもいいですね。米国では上場企業の年次報告書に非財務情報を盛り込む動きを米サステナビリティ会計基準審議会(SASB)が仕掛け、SASBの基準を発表しています。

 私たちはSASBを支持していますから、企業がSASBになじむよう働き掛けていますが、アマゾンもそうした報告を進めている企業の1つです。持続可能性に関してアマゾンがたどった歩みは立派です。小売店、食料品店、輸送会社などESGの問題に様々なレベルで取り組んでいます。皆さん知っての通り、ユニリーバも良い会社です。

 日本企業だとエーザイです。最高財務責任者がカルスターズを訪れて対話した際、感銘を受けました。同社は世界保健機関(WHO)を通じたリンパ系フィラリア症治療薬を途上国に無償提供しています。治療薬を無償で与え、健康になってもらうと、やがてその人たちが顧客になるというビジネスを展開しています。社会に貢献しつつ、ビジネスにもなる。そこがESGの鍵です。

――日本企業に今後要望や期待することは何でしょうか。

ライス 外国の投資家と関わる日本企業が増えてほしいですね。私たち海外の投資家も企業と同じ目標に向かって動いていることを理解してほしいです。企業が業績を上げ、利益を上げることを、共に目指しているのだということを分かってほしい。

 企業と投資家はパートナーシップと信頼関係が重要です。企業は資金を必要とし、投資家はリターンを必要としている。共生関係です。企業価値を高めるためにエンゲージメントをしています。今、良い関係を築きつつあると実感しています。

米カルスターズ ポートフォリオ・マネジャー ブライアン・ライス氏
写真/CalSTRS