配送トラックを水素で
3つ目の例はセブン-イレブン・ジャパンだ。2018年6月、セブンの古屋一樹社長とトヨタ自動車の友山茂樹副社長が共同で記者会見し、トヨタが開発する燃料電池トラックや燃料発電機をセブンの物流に活用することを検討していくと発表した。
全国に2万店あるセブンでは、1日6000台のトラックを走らせている。2020年にはその20%以上をハイブリッド車や天然ガス車、電気自動車にする目標を掲げ、既に15.5%に達した。次の一手として導入するのが燃料電池トラックだ。3トン冷蔵車両で2019年春から2台導入する。
店内の商材や包装材も環境配慮型にしている。年間10億杯を販売するセブンカフェは、カップに間伐材、ふたにリサイクルPET、ストローにバイオマス素材を使った材料を使い、シャンプーや洗剤の詰め替え用包材にはリサイクルPETを使う。
3社の例は氷山の一角にすぎない。持続可能性の要求は、最終製品の企業から部品メーカーへ、さらに素材メーカーへとドミノ倒しのように起きている。
ブリヂストンは2017年12月に「グローバルサステナブル調達ポリシー」を発表した。サプライヤーへの要求を項目ごとに「必ず実施してもらいたいこと」「できたら実施をお願いしたいこと」に分けて明確化した。
例えば調達に伴う生物多様性への配慮では、「必ず実施」に法令順守や保護価値の高い森林の保全などを挙げ、「できたら実施」にライフサイクル全体での環境マネジメント計画の策定などを盛り込んだ。そのブリヂストンには、自動車や小売りなど川下の企業からCDPを含む持続可能性の調査票が2017年20件以上舞い込んだという。
サプライチェーンでドミノ倒しが起きている背景には、資源の枯渇や、環境・人権問題の深刻化がある。委託生産工場や紛争鉱物採掘に伴う人権侵害の問題は増えている。
国際的な要請もある。パリ協定を踏まえ、事業活動を100%再エネで賄うことを宣言する国際イニシアティブ「RE100」に加盟する企業は130社を超え、ウォルマートやネスレなど世界の大企業が加盟する。
容器では脱プラスチックの規制が進んでいる。欧州委員会は2018年5月、トレーやストローなどの使い捨てプラスチック10種類の使用を禁止する法案を提出した。6月にカナダで開かれた主要7カ国首脳会議(G7)では、海のプラスチックを減らすため、2030年までにプラスチックをリユースまたは回収可能なものにするという憲章を採択した。独アディダスが世界75カ所のオフィスでプラスチックボトルを使用禁止にするなど、自主規制に乗り出す欧米企業も現れた。
さらに日本では、2年後に迫った東京五輪が持続可能な調達を後押しする。2018年6月には五輪の持続可能性に配慮した運営計画と、パーム油と紙の調達基準が策定された。五輪に製品を納入する企業はもちろん、その企業に原材料を納めるサプライヤーも対応を迫られている。
五輪はきっかけにすぎない。会場に物品を納入しなくても、五輪を契機に社会の意識や行動が変わり、原材料やエネルギーを持続可能にしてほしいという声は強まりそうだ。
「東京五輪の調達コードや基準を参考にして、自治体が調達コードや企業が調達方針を策定していただけるとうれしい」と、組織委員会の荒田有紀・持続可能性部長は期待する。2020年のサプライチェーンに選ばれるために対応は待ったなしだ。
「日経ESG」(2018年8月号)では、持続可能な調達に取り組む企業事例などさらに詳しく紹介しています。