時代とESG投資の要請に応える

――2018年9月、石炭火力の撤退方針を発表しました。ESGの観点から電力事業の方向性を教えてください。

世界各地で再生可能エネルギーの開発・運営を積極的に行っている。(写真は、風力発電事業)
(写真提供:丸紅)

柿木 石炭火力発電所の新規開発は今後行わず、現在保有する権益についても2030年までに半減させ、再生可能エネルギーへのシフトを進めます。人間が生活の向上を目指せば目指すほど電気は必要になる。ただ、石炭火力はやはり地球環境に大きな影響を与えます。今後を見据えると再エネにシフトしていく必要があり、ESG投資の観点からもそれが求められていることから、今回の決定に至りました。どうせなら率先して取り組むべきだと、国内の発電事業者に先駆けて方針を発表しました。

 ビジネスの面でいえば、これまで石炭火力で大規模な発電事業を手がけてきましたが、近年は再エネが成長し、石炭火力のポートフォリオをなくしていっても電力のビジネスモデルは成り立つという感触は得ていました。

 今後、原則として新規の石炭火力には投資しませんが、国によってはまだ需要もあります。日本政府とその国の間で合意がなされ、環境負荷を減らす取り組みがしっかり行われる案件については、新規事業を検討する可能性は残しています。

――情報開示や投資家との対話についてどのように取り組んでいますか。

柿木 ESG投資家は、当社のサステナビリティに対する本気度を知りたいのだと思います。そこで、レポートはもちろん説明会なども開催して当社の取り組みをアピールしています。サステナビリティの追求が非財務価値を向上させ、企業価値につながることについても、投資家からの質問に答えていく準備ができています。また、TCFDをはじめとする様々なルール、制度にも積極的にかかわり、今後は当社がリードしていく形にできればと考えています。

――ESGやサステナビリティ経営の未来について、どうお考えですか。

柿木 企業価値を測る上で財務価値と非財務価値がありますが、今後はそもそもの価値とは何かを見つめることが求められてくる。ESGもそこに至る手法の一つだと捉えています。私見ですが、電力事業のような基本インフラは、究極的には無料を目指すべきではと考えます。ただ、電気を無料にするだけでは企業に利益が生まれません。利用者のニーズを考え、その先にあるものを想像し、電気を介して新しいビジネスにつなげていくことが重要だと思っています。