聞き手/田中 太郎(日経ESG編集長)

”カップヌードル進化論”の一環としてバイオマスプラの使用を開始。食を通じて環境や社会の問題に取り組みSDGsへの貢献を目指す。

――「バイオマスECOカップ」への切り替えは、どのような問題意識で取り組まれたのですか。

安藤 宏基(あんどう こうき)
日清食品ホールディングス 代表取締役社長・CEO
1947年大阪府生まれ。71年慶應義塾大学商学部卒業、73年日清食品入社。日清焼そばU.F.O.、日清のどん兵衛、日清ラ王などを開発。85年代表取締役社長。2008年日清食品ホールディングス設立に伴い、同社代表取締役社長・CEOに就任。世界ラーメン協会(WINA)会長、国連WFP協会会長(写真:村田 和聡)

安藤 宏基 氏(以下、敬称略) “カップヌードル進化論”の一環です。地球上の生物は、環境に合わせて進化しなければ生き残れません。それと同じでカップヌードルも、社会の要望を一足先に取り入れて進化し続けなければ、プロダクトライフサイクルが廃れてしまいます。

 カップヌードルが抱えるイシューは数多くありますが、その中のひとつがCO2排出量の削減です。「バイオマスECOカップ」は、使用するプラスチックの一部を植物由来に置き換えることで、従来に比べて1カップあたりの石化由来プラスチック使用量がほぼ半減します。CO2排出量については、原料の調達からカップの製造、輸送及び焼却に至るライフサイクルで約16%削減できる見込みです。

 本来、ゴミはリユース・リサイクルが理想ですが、食品容器は使用後の汚れがあるため、焼却以外の処分は困難です。「バイオマスECOカップ」は、焼却時のCO2排出をオフセットすることができます。カップヌードルブランドの商品について、2019年中に順次切り替えを始め、2021年度には完了する予定です。

――RSPO認証パーム油の使用についてお聞かせください。

安藤 パーム油の生産地では、農園開発のために熱帯林が伐採されて生態系が破壊されたり、児童労働や農園労働者が人権侵害を受けるなど、様々な問題が起きています。こうした環境問題や社会問題は国の動きを待つより、企業が率先してCSVとして取り組むべきだと考えています。

2019年3月から関西工場では、森林破壊防止や生物多様性保全、人権に配慮して生産・加工された「認証パーム油」の使用を開始した
(写真提供:日清食品ホールディングス)

――世間で反響を呼んだ“謎肉”も、食の問題に対する解決策ですね。

安藤 創業者は“謎肉”という言葉を聞いたら驚くでしょうね。あれは大豆たんぱくを原料に使用した環境配慮型食品です。人口爆発による食糧不足が危惧される中、植物性たんぱく食品は、家畜を肥育するのと比べて地球環境への負荷が低いことから、今後さらに重要になります。

 私どもでは、ほかにも牛細胞を培養して形成する培養肉の研究にも取り組んでおり、地球規模の食の問題にも貢献することを目指しています。

――ESGへの関心が高まり、長期ビジョンが重視されるようになりました。

安藤 長期ビジョンの宣言は、ESGだけでなく競争力強化という視点でも重要です。今後、環境に配慮したエシカル消費が広がり、地球環境や生態系に悪影響を与える企業は、市場から退場せざるを得なくなるでしょう。そうした社会変化を見据えて、2030年を目標に「EARTH FOOD CHALLENGE」をスタートさせます。先ほどお話しした「バイオマスECOカップ」は、その取り組みの一環です。具体的な内容は、2019年度中には発表する予定です。

「バイオマスECOカップ」で業界初のバイオマス度80%以上を実現。2019年12月からカップヌードブランドの商品について順次切り替える