意識共有のツールにKPI活用

――6つのマテリアリティについてアクションプランとKPI(数値目標)を詳細に設定しています。そこまで落とし込んでこそ行動に結びつくという考えですか。

蓮輪 KPI達成そのものだけが目的ではありません。社員や協力会社の人々に、共に目指すところを分かりやすく伝えるためのツールとしてもKPIを活用しています。数値目標を達成したか否かに一喜一憂するのでなく、数値目標を通じて自分たちの行動を見つめ直し、目標達成に向けて一丸となって努力するプロセスが重要です。大林組グループとして1つのベクトルに向かって進む際のPDCAを回すきっかけと捉えています。

■ ESG 6つの重要課題(マテリアリティ)・アクションプランおよびKPI
図版提供:大林組
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――建設業界ではIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボティクスなど新技術への対応も重要となります。どういう方針で活用を進めていますか。

蓮輪 一企業の知恵だけでイノベーションを実現することは難しいと考え、同じような経営理念と方向性を持つ企業と手を組みながら技術を開発しています。

 建設には設計・測量、組み立て、仕上げなどいろいろな技術が必要です。我々はそういう建設技術のユーザーでもあります。IoT、AI、5G(第5世代移動通信システム)、画像認識など新たな技術を使い、より良い品質で、より経済性の高い構造物を実現するため、ユーザーの立場から意見を出したり問題提起をしたりすることも必要です。そうして新しい技術を身につけることで、我々自身も社会環境の変化をとらえ、変革できると思います。

――具体的にどんなプロジェクトを進めていますか。

蓮輪 たとえば、2018年には大阪府茨木市の安威川ダムの建設現場において、KDDI、NECとともに5Gを活用し建設機械を遠隔操作で連携させる作業を実施し、成功しています。今後、土砂崩れなど2次災害のリスクがある場所での作業に活用することが期待できます。また、今年7月にはNEC、大裕と土砂の積み込み作業を自動化する建設機械の自律運転システムを共同開発しました。AIの力で労働力不足や技能継承の問題を解決できる可能性があります。

 オープンイノベーション手法も活用しています。2018年に「オープンイノベーション推進プロジェクト・チーム」を設置。2019年1月には、このチームを発展させ、経営基盤イノベーション推進部を作りました。米シリコンバレーにその活動拠点となるシリコンバレー・ベンチャーズ&ラボラトリを開設しました。研究機関、大学、スタートアップ企業などと組み、新たな技術の研究開発を進めています。2018年7月にはその初の成果として、次世代型の自動品質検査システムを開発。配筋検査作業で適用できることを実証しました。