一歩二歩先に研究を進める

――建設にとどまらず、エネルギーやインフラの領域でも事業を推進していると伺いました。

蓮輪 技術研究所が水素製造システムを構築したり、神戸ポートアイランドで川崎重工業と共に水素を燃料とする熱電供給システムの実証試験を行ったりと、水素サプライチェーンの構築に向けて動いています。また、風力発電事業にも取り組んでいます。2019年7月には共同事業者と秋田県北部洋上風力合同会社を設立。発電規模最大455MWの洋上風力発電の事業化を目指します。また、クルマの動力が化石燃料から電気へと移るなか、今後は自動車産業などとも連携し、MaaS(次世代移動サービス)の広がりにも対応していきたい。

秋田県北部洋上風力発電事業での風車設置イメージ
(写真提供:大林組)

 さらには、発注者の要請・要望に応えるという従来型の請負業にとどまらず、建設事業という切り口から、我々の技術を活用し、来るべき社会でプレゼンスを発揮することが大きな使命だと考えています。一歩二歩先に研究を進め、高付加価値の提供による新たなビジネススタイルを構築したいと思います。

――これからの建設業は建設して終わりでなく、建設後も安全・安心で環境への負荷が少ない建造物で社会に貢献し続けることが求められます。長いタームのビジネスに変わりそうです。

蓮輪 今、取り組んでいるPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)やPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業はまさにそれに当てはまります。長い場合は30年単位で維持管理にも携わるので、建物の劣化や社会構造変化に伴う使い勝手の変化なども目の当たりにします。そこで得る知見がまた新しい世代の施設の建設で生きてくるはずです。

――大林組は100年超の伝統を持つ老舗企業でありながら、新しい取り組みに積極的な印象を受けます。

蓮輪 社会の変化はあまりにも急激です。たとえば1964年の東京オリンピックから55年たちましたが、その間、コンピューターなどIT化が進みオフィス環境は様変わりしました。我々はこうした社会の変化をとらえ、安全・安心で、快適で、健康に寄与できるような空間を目的にかなった形で提供することが求められています。少子高齢化への対応など課題は山積しています。研究開発や新しい取り組みには果敢に挑戦することが必要だと考えています。

五輪・万博を好機ととらえ変革

――ESG経営を推進していく中で今の課題は何ですか。

「社会変化を捉え、果敢に挑戦する」

蓮輪 ヒト・モノ・カネの経営資源の中で大切なのは何と言ってもヒトです。大林組の社員だけでなく、協力会社や国内外グループ会社の従業員も含めて、いかに理念を共有し意識を浸透できるかが喫緊の課題です。一所懸命、みんなを鼓舞しているところです。

 社員、協力会社の皆さんの価値観は多様です。そういう中では、人材教育を行うというより、上司・部下・同僚同士が学び合い、影響し合えるような環境をつくることが大事だろうと思います。カリキュラムに沿って知識を詰め込むことが教育ではありません。本質的に楽しい仕事を分かち合い、働く喜びを得られれば、自ずと人は成長すると私は思っています。

――2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが、2025年には大阪で大阪・関西万博が開催されます。日本中が一致団結し、力を発揮する一種の転換点になるとも期待されていますが、どう捉えていますか。

蓮輪 おっしゃる通り、国を大きく動かし得る一大イベントであり、政府がそういう機会を創出し具現化しようとしていることに対して、大林組グループとしても1人の企業人としても期待しています。記念すべき国家プロジェクトの実現の中でエネルギー、通信、メディアなどのインフラも大きく変わることでしょう。大林組グループはこれを好機と捉え、変化にしなやかに適応しながら「地球・社会・人」と自らのサステナビリティの実現に向けて、多様な事業を展開していきます。