聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

循環型社会実現に自動車産業界と連携して取り組む自動車リサイクル促進センター(JARC)。本業自体が環境・社会課題の解決に貢献するのに加え、近年はESG債への投資も始めている。

――最初に、財団設立の経緯と事業内容を教えてください。

阿部 知和(あべ・ともかず)
自動車リサイクル促進センター 専務理事(COO)
1959年東京都生まれ。1984年東北大学工学部卒業後、出光興産入社。2000年ホンダエンジニアリング入社、車体研究開発部長、塑型技術部長、本田技研工業環境リサイクル推進室長、資源循環推進部長を経て、2019年7月から現職(写真:村田 和聡)

阿部 知和 氏(以下、敬称略) 自動車リサイクルの様々な課題に対応するため、自動車業界の横断機関として2000年に設立されました。2005年1月施行の自動車リサイクル法に基づき、自動車所有者から集めたリサイクル料金の管理やリサイクル促進に関する調査・研究、普及・啓発、情報提供などを行っています。

――自動車と二輪車のリサイクル事業の進捗状況を教えてください。

阿部 2005年から自動車リサイクル制度の本格運用が始まり、最初の5年はリサイクル料金を適切に集めて制度を安定化させる活動を展開しました。2010年以降はリサイクル率向上とリサイクル料金の適正化に取り組み、2015年には安定稼働に至っています。2018年には国内で排出された車のうち、中古車などとして販売・輸出されたものを除く、約338万台が使用済み自動車として処理されました。日本はリサイクル制度がきわめて順調に機能しており、使用済み自動車のほとんどがリサイクルされています。

 一方、二輪車については、廃棄物処理法の特例制度を活用した国内4メーカーなどの自主的取り組みとして、2004年に引き取りを始めました。2011年10月からは廃棄時無料引き取りという形で、メーカー負担により適正処理とリサイクルを安定的に実施しています。二輪車の場合は部品としての再利用率が高く、中古二輪車として海外に輸出される台数も多いため、すでにリユースが徹底されています。

――メーカーや自治体とはどのように協力関係を築いていますか。

阿部 メーカーとは自動車リサイクル法が施行される段階から、使用済み自動車のリサイクル・適正処理と資源の有効利用を行うために連携を図り、リサイクル制度の安定運用に努めています。

 自治体に対しては、使用済み自動車の不法投棄、輸送が困難な離島対策、大規模災害対策などについてアドバイスや教育プログラムを提供し、問題解決に向けた協力関係を築いています。地震・台風等の大規模災害で被害を受けた車については被災自治体の支援を行い、とくに所有者が分からなくなった自動車のリサイクル料金を特別措置として当財団が負担するなど、行政と連携した適切な対応を進めています。

――自動車、二輪車リサイクル事業における課題は何ですか。

阿部 中国の廃棄物輸入規制で廃棄物処理全体が滞り、この流れが自動車リサイクルにも大きな影響を及ぼしているので、それをどう解決していくかが直近の課題です。また、日本のリサイクルの仕組みは管理コストが高く、その低減に向けた取り組みも継続していく必要があります。

 一方、輸出した中古車は輸入国で廃棄処理するのが原則ですが、適切に処理できない国も現実に存在します。そこで輸出車がどう処理されているかを調査・把握し、対応を検討することも課題となっています。