聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

4200億ユーロの運用資産を誇るBNPパリバ・アセットマネジメントはESG投資の旗を振る。TCFDでも中核の役割を担うルイス氏が新たな投資戦略を語る。

――BNPパリバ・アセットマネジメントは仏パリに本社を構え、運用総額が4200億ユーロ(約53兆円)を超える規模を誇ります。最近、グローバル・サステナビリティ戦略を発表して、気候変動問題などESGを重んじる投資方針を明確に打ち出されました。その背景を教えてください。

マーク・ルイス
BNPパリバ・アセットマネジメント サスティナビリティ・リサーチ・グローバル・ヘッド
2019年1月BNPパリバ・アセットマネジメントに入社し、サステナビリティ・リサーチに従事。入社以前は、イギリスの非営利シンクタンクCarbon Tracker Initiativeのマネージング・ディレクター兼調査責任者やバークレイズのマネージング・ ディレクター兼欧州公益部門のリサーチ責任者などを歴任。また、2016年5月より金融安定理事会の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)メンバー。シェフィールド大学で現代言語学と経済学の学士号、ケンブリッジ大学でラテン・アメリカ研究のMPhil、ロンドン大学でドイツ語学の修士号を取得。(写真:大槻 純一)

マーク・ルイス 氏(以下、敬称略) 当社は気候変動が投資価値に現実的な影響を及ぼすものであると考えています。顧客資産の管理にあたり、大きなリスクにつながる気候変動を考慮することは当社の義務です。当社がTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)を最初に採用した企業の一つとなった理由も、受託者責任を持ち、リスクを減らす義務があるからです。こうした背景から気候変動問題を投資戦略の中核に置きました。

――新しいアプローチによって、ポートフォリオはどう変わっていくのでしょうか。

ルイス 事業全体をパリ協定に沿って見直し、2025年までに発電に関する投資を国際エネルギー機関(IEA)の「SDS」(気温上昇を50%の確率で2度未満に抑えるシナリオ)に合わせ、気候変動に関するリスクを管理する新運用ポリシーを打ち出しました。2020年1月施行の新ポリシーでは石炭にフォーカスし、売上高のうち燃料炭が10%以上を占める採掘会社、または世界の燃料炭生産の1%超を占める採掘会社をポートフォリオから除外します。

 また石油やガス、鉄鋼、セメントといった発電以外の炭素集約型産業についても、新ポリシーに基づきモニタリングを始めます。これらの産業にも製造工程での低炭素化に挑戦する企業があります。エネルギー転換と脱化石燃料を進める企業は未来において勝者となるでしょう。ですからどの企業が有効な取り組みを行っているかを注視し、ポートフォリオを決めていきます。投資プロセスにおいて、これがパリ協定に整合したポートフォリオを生み出す最初のステップとなります。

――その評価にあたっては、ESGが重要なポイントになりますね。

ルイス その通りです。すべてのポートフォリオはESGを重視し、すでに運用する全ファンドにESG基準の導入を完了しています。ただしE、S、Gそれぞれの重みは企業によって異なります。製薬会社ならEの占める割合は大きくありませんが、鉄鋼やセメント会社においてはいかに炭素排出を削減するかが明らかに重要なポイントですから、Eが最も重視されます。

 当社のアナリストは企業ごとにこのEの部分を注視していきます。なぜなら投資家にとって、環境対策が重要な関心事となっており、有効な環境対策を行わない企業への投資を嫌がるようになっているからです。

■ サステナブル投資アプローチ: 4つの柱
※ 3つのE: エネルギーの転換(Energy Transition)、環境の持続可能性(Environmental Sustainability)、平等と包摂的な成長(Equality)
(出所:BNPパリバ・アセットマネジメント)
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