聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

サステナビリティ目標を中期経営計画に組み込み、事業とESGを強固に関連付ける。2018年に発表した「W350計画」に向けた研究技術開発も着実に進めている。

――2019年5月に2019年から2021年までの3年間を対象とする、「中期経営計画2021」を発表しました。基本の考え方について教えてください。

川田 辰己(かわた・たつみ)
住友林業 取締役 常務執行役員
1962年生まれ。86年住友林業に入社。2012年人事部長、13年に人事部働きかた支援室長を兼任。14年経営企画部長、16年執行役員に就任。17年常務執行役員、18年取締役になり現職(写真:村田和聡)

川田 辰己 氏(以下、敬称略) 中期経営計画は未来志向を柱にしています。今、ESGの流れや様々な価値観の転換を含め、環境の変化が激しくなっています。デジタルトランスフォーメーションもスピード感がありますね。一方で、日本社会は少子高齢化などの社会課題も抱えています。こうした変化をとらえたうえで、ビジネスを積極的に作っていくという考えです。

 そのなかで事業とESGの一体化をグループ全体で掲げることも、重要な柱の一つです。住友林業は、事業を通じて地球環境や社会に貢献していますが、さらにしっかりその部分を社員に意識して取り組んでもらうために、例えばサステナビリティの中期計画も別に策定するのではなく、「サステナビリティ予算」をこの計画に組み込んでいます。つまり、社員が取り組んでいる事業はどのようにサステナビリティに貢献して、SDGsのどの部分につながるのかが分かるように目標設定や評価をしています。

――創業350年に当たる2041年に向けて、高さ350mの木造超高層建築物の開発を目指す「W350計画」を発表されていますが、今後はどう進めていきますか。

川田 「W350計画」は木の技術や資産価値の変革のシンボルであり目標ですが、これから20年かけて技術開発とコストダウンを進め、実現に近づけていきます。

 2019年10月21日には茨城県の筑波研究所に新研究棟が完成し、ポストテンションという技術を導入しました。元はコンクリート造で使われる技術で、住友林業が日本で初めて木造に応用しました。壁柱に鋼棒を通して上下に押さえつけるので、地震で横揺れがあってもテンション(圧力)のおかげで元に戻ります。

 木と鉄をうまく結合させるハイブリッド技術の開発にも力を入れています。

 加えて、高層建築では耐火性能の確保が課題となります。その建築材料の開発も必要です。政府は非住宅の木造化を推進しており、我々もこの新研究棟をW350計画の礎と位置付け、「木材価値も高める」技術を数多く取り入れ、実験検証を進めていきます。

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2019年10月21日に完成した住友林業筑波研究所の新研究棟は、「W350計画」の開発拠点と位置づけられている(左)。新研究棟の壁柱は縦横1200㎜、厚さ300㎜の単板積層材(LVL)のブロックを積み上げ、その中に鋼棒を貫くオリジナルポストテンション構造を採用。W350計画の実現に向けて、このような木を“活かす”技術開発を推し進めていく
(写真提供:住友林業)