聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

経営ビジョンに「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を掲げ、中期経営計画を進める。商品・サービスを通じた生活習慣のリ・デザインによって、「心と身体のヘルスケア」の実現を目指す。

――2018〜20年の中期経営計画「LIVE計画(LION Value Evolution Plan)」の概要を教えてください。

掬川 正純(きくかわ・まさずみ)
ライオン 代表取締役 社長執行役員 最高執行責任者
1984年東京大学農学部卒業後、ライオン入社。2012年取締役執行役員、2016年常務取締役執行役員を経て、2018年代表取締役専務執行役員に就任。2019年1月より現職(写真:村田和聡)

掬川 正純 氏(以下、敬称略) 「LIVE計画」は4本柱で進めています。第1が「新価値創造による事業の拡張・進化」、第2が「グローカライゼーションによる海外事業の成長加速」、第3が「事業構造改革による経営基盤の強化」、第4が「変革に向けたダイナミズムの創出」です。第1、第2は会社を成長させる戦略で、第3、第4はそれを実行する土台をつくる戦略です。第3、第4が整わなくては第1、第2も実現しないと考えています。

 新価値創造による事業の拡張・進化は、まさに「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」という経営ビジョン実現に直結するものです。商品やサービスを通じて、歯磨き、手洗い、洗濯、掃除などの生活習慣を楽しく前向きなものに「リ・デザイン」し、「心と身体のヘルスケア」を実現したい。

 1つの成功例が「クリニカKid'sハブラシ」。ネック部分が柔軟に曲がる設計で安全性が高く、子供は楽しく歯を磨き、親は安心して見守れます。子供の歯磨きが、親子の大切なコミュニケーションの時間に変わります。これこそ生活習慣のリ・デザインです。一つひとつの製品で、このような価値提供を考えます。

■ 「LIVE計画」の基本戦略
出所:ライオン
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――18年に「イノベーションラボ」を立ち上げた狙いは何ですか。

掬川 世の中になかった商品・サービスで「心と身体のヘルスケア」を実現することです。専任部隊がビジネスモデルを思案しています。

 例えば、スマートフォンで撮影した舌の画像から口臭リスクを判定する口臭ケアサポートアプリ「RePERO(リペロ)」を開発しました。口臭に対する不安を払拭することでコミュニケーションの活性化につながるサービスと考えています。18年には表情筋に口の中からアプローチする美容機器「VISOURIRE(ヴィスリール)」を開発。クラウドファンディングで支援を募集したところ、すぐに目標額を達成しニーズの高さを確認しました。従来通りの物販ではない、新たなビジネスモデルを検討中です。

――海外事業拡大のために大手グローバル企業とはどう戦いますか。

掬川 差別化のポイントは2つあると考えています。第1がローカルにカスタマイズした商品を提供すること、第2が日本企業のアイデンティティを前面に打ち出すことです。

 日本企業であるライオンの強みは「真面目さ」。例えば、ハミガキの担当者は味の決め手となる質の高いミントを厳選するために毎年、米国の畑を回ります。コストがかさみ非合理的かもしれませんが、こだわりを持ち真摯にモノづくりに向き合うからこそ、ロイヤルティーの高いファンを獲得できるのだと思います。

 メイドバイジャパンを強みにする上で注目しているのがアウトバウンドセールス。訪日時にライオン製品への信頼を獲得し、帰国後にオンラインで輸入品を、さらには現地生産品を購入してもらう流れをつくりたい。訪日観光客が増える東京五輪で積極的に試行したいと思います。