聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

創業時から「栄養」をキーワードに健康向上のための取り組みを続ける。食や医薬の分野で垣根を超えたイノベーションを図り、社会の問題を解決する。

――「2026ビジョン」では事業、サステナビリティ、経営基盤それぞれのビジョンの「三位一体」を打ち出しました。狙いを教えてください。

川村 和夫(かわむら・かずお)
明治ホールディングス 代表取締役社長
1976年明治乳業入社。99年経営企画室長、2007年取締役、12年、前年に事業統合により商号変更した明治の代表取締役社長および明治ホールティングスの取締役に就任、18年より現職(撮影:村田 和聡)

川村 和夫 氏(以下、敬称略) 2016年に100周年を迎えました。「2026ビジョン」は次の100年を見据え、一歩踏み出すという位置付けです。これまでは事業ビジョンが中心でしたが、今後はサステナビリティの推進を目指しCSR、SDGsに力を入れ、ガバナンスの構築を進め経営基盤ビジョンを強化することで、新たな可能性につなげたい。グローバルにおいて「明治らしさ」を発揮するために、やみくもな規模の拡大ではなく質の競争で勝ち抜くためのイノベーションを起こしたいと考えています。

――経営基盤ビジョンの中で、従業員の力が発揮できる環境づくりやブランド力を高める取り組みをされていますが、先進的なアプローチですね。

川村 入社のタイミングはそれぞれ違いますが、継続的に人材育成を充実させることは重要だと考えています。当社の明治ブランドへの意識はもともと強いものがあります。明治製菓と明治乳業が経営統合したときに共通のブランド価値は何か、コーポレートブランドをどう発展させるかを考え抜いた歴史があります。

■ 「明治グループ2026ビジョン」を構成する3つのビジョン
2016年に、10年後の2026年に向かって目指すべき企業グループ像を示すものとして策定された。「事業ビジョン」「サステナビリティビジョン」「経営基盤ビジョン」の3つが、三位一体となって推進する
(出所:明治ホールディングス)
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――20年には「栄養サミット」が開かれますが、栄養の重要性をどう捉えていますか。

川村 グループの創業精神のひとつに「栄養報国」という言葉があります。私も新入社員の時、研修で教わり印象に残っていますが、栄養事業を通じて社会に貢献するという考えをベースに事業展開を行ってきました。大正時代は「ハイカラ」だったチョコレートも健康を意識して作りましたし、牛乳が普及していない時代、粉ミルクの代わりに使われた練乳も栄養食品として世に出していきました。

 飽食といわれる現代社会でも、実は解決すべき栄養課題が提起されています。たんぱく質の摂取量が1950年代より減っているといわれており、将来出産を予定している成長過程の若い女性や、筋力が低下する高齢者のたんぱく質不足が特に深刻とされます。たんぱく質を手軽に摂取できる商品を開発するなど、継続して栄養への取り組みを続けています。

 医薬品の分野に進出したのも、感染症で亡くなる方が多かった戦中、戦後の時代に、抗生物質を新しい薬として提供することで、社会に貢献ができたからです。