聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

超高層ビルを中心とする大規模再開発で、東京都心の街並みに新たな息吹を入れる。自然災害が多発する中、機能を集約した強じんかつサステナブルな街づくりを目指す。

――開発物件は災害対策に力を入れていますが、その理由は何ですか。

森 浩生(もり・ひろお)
森ビル 取締役副社長執行役員
1961年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業後、日本興業銀行入行。95年森ビル入社。97年取締役、2000年常務取締役、03年専務取締役に就任。営業部、中国事業部などの担当を経て、13年より現職(写真:川田 雅宏)

森 浩生 氏(以下、敬称略) 世界の人口が都市に集中する時代を迎え、都市の自然災害リスクが高まっています。内閣府が作成した資料によると、東京・横浜間の地域は残念ながら世界で最も危険性の高い都市です。当社の事業エリアがまさに東京の中心部であり、東京都港区が発表した浸水ハザードマップで危険性が指摘される地域でもプロジェクトが進んでいるため、災害に強いレジリエントな街づくりは重要な課題です。

――災害対策は街づくりのコンセプトにどう組み込まれているのでしょうか。

街づくりにおける3つのミッションが「安全・安心」「環境・緑」「文化・芸術」で、「安全・安心」は災害対策に直結します。これらを実現するため、再開発エリアの中心となる建物を超高層化し、そこに様々な機能を集約させる「Vertical Garden City(垂直の庭園都市)」というビジョンを推進しています。

 例えば300戸の戸建住宅が立ち並ぶ地域を再開発して、耐震性の高い50階建てのビルを1棟に全ての住宅を集約します。すると建ぺい率は元の約50%から約3%に大幅に減少し、広々とした空地を確保することができ、災害に強い街が誕生します。さらに公園や学校、病院などの公的機能に加え、オフィス、商業、文化施設など多種多様な機能を集積することで街のにぎわいを創出します。こうすることで職住近接を実現し、人の移動に伴う環境負荷も低減、緑地も大幅に増やすことで地球温暖化対策にもつながります。

――災害対策として具体的にどのようなことをしていますか。

1995年の阪神淡路大震災を契機に「逃げ出す街から逃げ込める街へ」というコンセプトを掲げ、ハードとソフトの両面から対策を進めています。まずハード面では、耐震だけでなく制震・免震技術も取り入れ、地震に強いビルづくりを行っています。地震の揺れによるダメージを計算し、ビル内にとどまっていても安全かどうかを確認できる独自のシステムも開発しています。

 電力についても分散型で安定供給できるシステムを構築しています。例えば六本木ヒルズの場合、都市ガスを利用した発電をメインとし、バックアップとして電力会社からの電源供給も受け、さらに両方が止まったときのために灯油で72時間稼働する非常用発電システムも用意して、3重の備えをしています。2011年の東日本大震災では六本木ヒルズで発電した電気を東京電力に供給しました。上水道が停止しても生活用水を確保できるように井戸と浄水装置を設置したり、ビル間をつなぐ無線システムや、ビルの被害状況を共有できる「災害ポータル」も整備しています。